適当にあしらわず時間がある時ゆっくりと話を聞いてあげる
「何度も同じことを聞くんです。それも数分おきにです。なんとかなりませんか」
認知症になった母親を介護している女性からこんなことを聞いた。時間や今日の日付、食事のことなどが多いそうだ。介護する家族にはたまったものではないが、どうして繰り返し質問するのだろうか。まず、母親になったつもりで考えてみる。
先ほど尋ねたはずなのに、何を尋ねたのか忘れてしまった。大事なことだったらどうしよう。迷惑をかけるのではないか? やっぱり聞いた方がいいだろうか? よし、思い切って聞いてしまえ、と決断して息子に聞いたのが今日の日付だった――。
当事者でなくても、私たちだってそういうことはたまにあるはずである。それがたびたび起こると、本人も不安でいてもたってもいられない。大切なことを忘れてしまったのではないかと思うと、気がかりで落ち着かないだろう。だから何度も聞くのだ。
ところが尋ねられた家族は、同じ質問を何度も聞かされるので、また始まったとばかりに邪険にする。