生き物の謎に迫る本特集

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「子供に言えない動物のヤバい話」パンク町田著

 春本番。冬の寒さに耐えた植物が一斉に芽吹き、動物たちは子育てに励む。そんなにぎやかな命の謳歌には不思議がいっぱい詰まっている。ということで、今回は生物たちの謎に迫る新書4冊を紹介する。

 あまり知られてはいないが、自然界で捕獲され、動物園などで飼育されることになった多くの野生動物には、事前に飼育のための調教が必要だという。野生動物に人間から与えられる餌を食べることを教えるのも一筋縄ではいかないそうだ。そうした動物のトレーニング・研究施設の代表を務め、これまでさまざまな動物と接してきた著者は、あの畑正憲氏に「第2のムツゴロウ」を名乗ることを許された人物。そんな動物の心理や行動を熟知する著者が、動物たちの知られざるヒミツを紹介してくれる面白コラム集だ。

 例えば、温泉につかる姿が人気のカピバラは、その容姿からのんびり、おっとりしているように見えるが、実は他にはいないほど陰険な連中だという。最初から一緒の群れ同士は仲が良いが、転校生のように違うところからきた別のカピバラは、絶対、グループに入れず、大ゲンカどころか、殺し合いにまで発展してしまうらしい。

 芸達者で人懐こいその姿からは想像できないが、チンパンジーは子殺しや戦争をする凶暴さを持つ。その握力は300キロもあり、人間が素手で戦って勝てる相手ではないという。また、チンパンジーはモノをプレゼントして交尾を要求する「売春」まで行うそうだ。

 動物園の人気者、ジャイアントパンダのあの愛くるしい丸い顔も、かたい竹を食べるために発達した筋肉でできていると聞くと、ちょっとイメージが変わって見えてしまう。

 読むと動物園に行きたくなる、そんな動物たちの知られざるエピソードが満載。
(KADOKAWA 820円+税)

「植物はなぜ薬を作るのか」斉藤和季著

 人類は誕生と同時に身近な植物を薬として用いてきたという。ケシから作られるモルヒネや、ヤナギから作られるアスピリンなど、植物から得られる化学成分と薬の関係を紹介。

 もちろん植物は人間のためにこうした化学成分を作っているわけではない。動かないという生存戦略を選択したゆえに植物は独自の化学的防御戦略を発達させたのだ。その結果、捕食者に食べられないための有毒な化学成分や、病原菌の増殖を抑える抗菌性のある化学物質、そして競争に勝つため他の植物の成長を抑え込む化学物質を作り出すようになったのだ。

 最新の研究成果をもとに、さまざまな化学成分を作り出す植物の謎に迫る知的好奇心をくすぐる科学本。
(文藝春秋 880円+税)

「ウニはすごい バッタもすごい」本川達雄著

 およそ130万種いる動物の95%以上を占める無脊椎動物の不思議な世界を案内してくれるサイエンステキスト。

 全動物の7割と一番種類が多く、個体数でも他を圧倒し繁栄する昆虫は、節足動物門に属している。その成功のカギは骨格にある。節足動物の骨格は、皮膚の外側にあり、体を外側から覆う。昆虫の外骨格を形成する有機物のクチクラは、複雑な分子でできており、軽量かつ丈夫で高機能という三拍子そろった優れもの。細長い脚や薄くて広い羽を可能にしたクチクラによって昆虫は大きな運動能力を獲得できたのだ。

 その他、動物の中で最強の筋肉「キャッチ筋」を持つ二枚貝などの軟体動物門など。無脊椎動物の巧みな生存戦略を解説。
(中央公論新社 840円+税)

「珍奇な昆虫」山口進著

 あのジャポニカ学習帳の表紙を撮影してきた写真家が、世界各地の珍しい昆虫との出合いをつづるフォト探訪記。

 東南アジアに生息する希少なハナカマキリは、別名ランカマキリとも呼ばれ、ランの花に擬態して近寄る生物を捕らえると紹介されてきた。しかし、タイやマレーシアのハナカマキリはいずれも草の上にいた。さらに観察してみると、ハナカマキリはミツバチしか襲わず、疑問を抱いて、研究者とともに調べると、通説とは全く異なるハナカマキリの生態が明らかになったという。

 他にも、食虫植物の消化液の中を泳ぐボルネオ島のアリや、誰も撮影に成功していなかったアフリカの巨大チョウなど、見たこともない昆虫たちを写真とともに紹介。
(光文社 1000円+税)

【連載】ザッツエンターテインメント

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