「メガネの歴史」ジェシカ・グラスコック著、黒木章人訳
メガネは今ではTPOに合わせてかけ替えるオシャレアイテムのひとつ。
本書は、起源からひもとき、必需品と装飾品の間を揺れ動いてきたメガネの歴史を多くの図版を交えて解説してくれるビジュアルブック。
1267年、ロジャー・ベーコンが、凸レンズによる拡大作用が視力の矯正に役立つ可能性があることを初めて発表。それから20年も経たないうちにメガネがこの世に誕生した。発明者はフィレンツェのドミニコ会修道士だった。
登場するなり、メガネは聖職者や製本・写本業者、官吏、大学教授、時計職人などに重宝された。
彼らの職業からもお気づきのように最初のメガネは遠視矯正用、つまり老眼鏡だった。レンズは高価な緑柱石や水晶から作られ、ゆえにメガネは誕生当初からステータスの高いアイテムだった。
ルネサンスの黎明期、メガネはすでに高級アクセサリーとなり、15世紀から16世紀にかけて、骨や牛の角、木材などで作った一対のフレームにレンズをはめ、リべットもしくはブリッジでつなぎ合わせるという最初期の基本形が完成する。当時、メガネで身を飾るのは男性だけで、女性がメガネを積極的に身につけ始めたのは16世紀になってからだという。
その後も、さまざまな形状に進化。小型望遠鏡のようなスパイグラス、クイジンググラス(片メガネ)、扇の要にレンズを仕込んだメガネなどの登場によって、メガネはようやく女性のファッションアイテムとなった。顔に「つる」で固定するテンプルグラスの登場もこの時期だ。
以降、ファッションブランドの作品なども紹介しながら、最新のアイウエアのトレンドまでを網羅。生活に密着した日用品の意外な歴史に好奇心が刺激される。 (原書房 3850円)