「世界一の動物画家が描いた家ネコと野生ネコの図鑑」薮内正幸画、今泉忠明監修
動物画家の薮内氏は、2000年に60歳の若さで亡くなるまで、実に1万点以上の動物画を残したという。本書は、その膨大な作品の中から、ネコ科動物を集めて編んだイラスト図鑑。
氏の動物画の素晴らしさは、描かれた動物の姿や動きを本物以上に伝えるリアルさだという。
巻頭に登場するのは、ネコ科だけでなく動物界の頂点に君臨するライオンだ。堂々としたオスライオンを中心に、ネコ科らしくお互いに頭をすりつけて挨拶を交わす母と子、さらに母の尻尾にじゃれる別の子と、ライオン一家が肖像画のように描かれている。ほかにも、メスライオンの狩りの様子を描いた作品などもある。
それぞれの毛並みの違いから、オスの黒々とした肉球の艶、子ライオンの瞳の輝きなど、迫力ある作品が読者を野生の世界へと導く。
同様に、トラやヒョウ、チーターに加え、日本人にはお馴染みだが、なかなか会えないイリオモテヤマネコやツシマヤマネコなど、まずは代表的な野生ネコたちが並ぶ。
写真などではなかなか完璧に写すことができないトラの縞模様も、イラストだからこそ、その全体がよく分かるという。
そのほか、ネコ科の中では変わった存在の「ウンピョウ」(サーベルタイガーの末裔ともいわれているらしい)や、そのウンピョウに柄の模様が似ているが近縁でもないという「マーブルキャット」、さらにボルネオ島にしか存在しない「ボルネオヤマネコ」やときにはシカのような大型動物も倒すというオオヤマネコ属の「ボブキャット」など、世界の野生ネコ39種に世界中で愛されるさまざまな柄のイエネコを加え、ネコ科全40種を網羅。氏のイラストに生態などの解説を添えて紹介する。
ネコ好きなら絶対に欲しくなる図鑑だ。
(宝島社 1680円)