「私はあなたのニグロではない」が突きつける差別の根源
米作家で、1960年代公民権運動の旗手のひとりであったジェームズ・ボールドウィンが全米で再ブームだという。きっかけはボールドウィン末期の未完成原稿を、黒人差別と暗殺の血塗られた映像と共に映像化したドキュメンタリー映画「私はあなたのニグロではない」の昨年の大ヒット。これが日本でも公開となり、話題になっている。
何より衝撃なのは、テレビでは絶対に流れないであろう映像の数々だ。
1950年代、白人だけの通う高校にただひとり登校する15歳の黒人少女ドロシーが罵声と嘲笑、唾まで吐きかけられるニュース映像。ビリー・ホリデイが代表曲「奇妙な果実」で歌った、木に首を吊られ、ゆらゆら揺れている黒人の惨殺映像などなど。ボールドウィンのほかメドガー、マルコムX、そしてキング牧師らの言葉は、リンチ映像などに重ねて流れると鮮烈で根源的だ。
全米ではこうした公民権運動に対する揺り戻しがきているとされる。その先導役はトランプ大統領のアメリカ第一、白人至上主義である。この作品の異例のヒットの裏には、そうした揺り戻しに対する対抗があると明大名誉教授の越智道雄氏(英語圏政治)は指摘している。