映画「女は二度決断する」監督語る 民族問題と沈黙の差別
右傾化する政治にネトウヨ、ヘイトスピーチが横行する日本社会の近未来図と話題だ。ドイツ極右組織NSUによる連続テロ殺人事件をモチーフに、人種差別からの殺人を描いた映画「女は二度決断する」。トルコ移民を両親に持ち、ドイツで生まれ育ったファティ・アキン監督に異民族・異文化間の問題を聞いた。
――2000年から07年までにトルコ人ら外国人9人が殺害された事件では、監督の知人も犠牲になった。
「ええ、私の兄のサッカーの知り合いでした。事件当時、私は20代後半だったのですが、とてつもない衝撃と恐怖を覚えました。まず警察の捜査。被害者であるトルコ人の犯罪組織内の抗争か麻薬をめぐるトラブルと決めつけ、ネオナチを捜査線上から外していたのです。それで残忍な犯人グループが野放しとなり、惨劇を繰り返していった。背景にある沈黙の差別。私たち家族も同胞もいつ狙われるか分からない恐怖を感じていました」
――映画でも、トルコ移民の夫と子どもを殺害された主人公カティヤ(ダイアン・クルーガー)が同じ目に遭います。警察は夫の周辺ばかり捜査し、ようやくネオナチの犯人を逮捕しても今度は法廷が無罪放免に。カティヤは夫が移民だからと思ってしまう。