NHK「ミス・ジコチョー」現代社会を反映する失敗学の物語
起きてしまった失敗の本質を検証し、失敗をどうやって今後に生かしていくかを検討するのが「失敗学」である。ドラマ10「ミス・ジコチョー~天才・天ノ教授の調査ファイル~」の見どころは、物語にこの失敗学を導入していることだ。主人公は東京第一大学工学部教授の天ノ真奈子(松雪泰子)。本来の専門は工学だが、「失敗学」の提唱者でもある。あらゆるジャンルが対象となる失敗学を武器に、さまざまな事故調査(ジコチョー)に挑んでいく。
これまでに化学工場の爆発事故、ライブハウスでの火災事故などを扱ってきた。真奈子は現場の状況や関係者を調べ直すことで、過去に起きていた小さな失敗に着目し、そこから新たな大失敗の原因に迫っていく。必要なら海外での実証実験もいとわない。
第一に、この真相解明のプロセスが、見る側の予想を超える展開となっているのが見事だ。失敗から目を背けたり、隠そうとしたりする組織が、より大きなダメージを受ける事例が増えている現代社会を反映している。
次に松雪泰子の好演。シャープな輪郭にメガネが似合い、クセのあるキャラクターをさらりと、そして見せ場ではキリリと演じている。このドラマは八津弘幸(「陸王」他)らの脚本家によるオリジナル・ストーリー。先週からの医療事故編も「ドクターX」にケンカを売りそうな迫力だ。