飯野矢住代誕生秘話<3>「私は二号の娘」発言で世界大会の渡航費が支払われない事態に
《ときおり洋服を作ってくれていたデザイナーから、情報を仕入れた。
ミスユニバースの飯野矢住代が銀座で働いてもいいとかいってましたよ。(中略)何でも渋谷の円山に芸者で出ているおっ母さんと母娘二人暮らしで、たいして楽でもない。そこへ持ってきてミスに当選しちゃったもので、やれドレスだ靴だとやたらに金がかかる。こんなことならいっそ出ない方がましだったみたいな結末らしくて》(「ザ・ラスト・ワルツ『姫』という酒場」/文春文庫)
山口洋子にとって飯野矢住代を援助する利点がないわけでもなかった。ここで恩を売れば「姫」のホステスにスカウトする算段がつくのだ。
「会ってみることにしたわ。だって、ミス・ユニバースが働く店なんてどこにもないじゃない」
洋子は紹介者にそう言った。(つづく)