沢村忠は“時代の寵児”に…女王・美空ひばりとも親しく付き合うようになった
「真空飛び膝蹴り」で一躍“時代の寵児”となった沢村忠には、目まぐるしい数のオファーが舞い込んだ。映画、レコード、イベント、CM……。女王・美空ひばりとも親しく付き合うようになった。ひばりの実弟である歌手のかとう哲也と以前から友人だった関係である。テレビ出演も頻繁になったが、キックボクシング中継がTBS独占だったため、テレビ出演のほとんどがTBS。例外は「スター千一夜」(フジテレビ系)くらいなものだった。
突然現れたスポーツ界のニューヒーローを他局が指をくわえて見過ごすはずがなかった。1969年秋の連続ドラマとして、フジテレビは石ノ森章太郎原作「フラワーアクション009ノ1」の制作を発表した。日本転覆を図る闇の組織に対し、日本防衛の使命を帯びた「ゼロゼロガールズ」が勇ましく立ち向かうという勧善懲悪もので、主演は金井克子、由美かおる、奈美悦子ら西野バレエ団のスターたちである。ここで彼女たちの相手役として、フジテレビが白羽の矢を立てたのが沢村忠だった。空前のキック人気に加え、俳優の前歴に着目してのことは言うまでもない。早速野口プロにオファーを出すと、OKの返事が来た。現役のプロ格闘家で連続ドラマに出演したのは、2002年に「はるちゃん6」(東海テレビ・フジテレビ系)に出演した魔裟斗が思い浮かぶが、当時では例のないことだった。