こまつ座「頭痛肩こり樋口一葉」一葉への哀切に満ちた鎮魂歌
この花蛍を軸に、夏子の乳姉妹で、明治維新で落魄(らくはく)した元旗本の娘・稲葉鑛(こう=香寿たつき)、夏子の幼なじみで判事の玉の輿に乗った中野八重(熊谷真実)ら6人の女の、「男社会から疎外された人生」が描かれる。
若村麻由美は幽霊らしい軽やかな所作で笑いを取りながらも凄艶な美しさ。
この芝居で最も生命力に満ちた邦子を瀬戸さおりが魅力的に演じ、頑迷な母を演技派の増子が好演。香寿、熊谷の軽妙なコメディエンヌぶりが客席を沸かせた。そして「新しい女」を目指す夏子を演じた貫地谷の誠実な演技が舞台にぬくもりを与えた。
終幕、多喜は死んで初めて「世間体」という鎖から解放され、邦子に自分の思い通りに生きるようエールを送る。生きているうちは自由になれなかった明治の女たちの悲しみが胸を打つ。
休憩挟み2時間40分。新宿・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで28日まで上演。大阪、岡山、東京多摩公演あり。 ★★★★