明和電機に訊く(後編)AIの進化でアーティストは追い込まれているけど「よっしゃ、キター!」という感じ
人間と機械の違いは
明和 そうなんです。考えてみれば、人間が文字を記録し始めた頃からAIの“ご飯”は作り続けていたんですよね。人間の知の蓄積を学習すると、人間の知を再現できるんだということを知らしめた。だから、結構なアーティストの人たちが「ヤベェ」と思っているんじゃないかなと。AIの発達によって人間のいろいろな職種が奪われるという話にもなっていますが、アーティストにとってもそうです。
原田 どういうことでしょう。
明和 同じことが写真が発明されたときにも起こったんです。写実画家はどんどん仕事を奪われた。だから、みんな抽象の世界に逃げて行った。シュールレアリスムというムーブメントが起きたときに、人間が夢を見ていたり、空想のなかのおかしな風景を描くということで、これは写真にはできないだろうと安心したハズなのに、それだってAIの進化でできるようになってきた。アーティストはどんどん追い込まれ始めています。
原田 たしかに。
明和 ただ、僕は性格がドMなので「よっしゃ、キター!」という感じなんですよ(笑)。この苦境で新しく何をしようかというのを考えられるようになりましたね。
原田 たくましいですね(笑)
明和 AIの利点として、人間の知の記録をすべて食べて分析してくれるので、今までの人類が手にしていない道具なんですよ。僕は今56歳で、30年間作り続けてきた約200点の作品をすべて自分で持っているんです。あとA4サイズのスケッチブックにイラストや設計図などを描くのですが、それも2万枚ほど全部保存してあります。これをAIに全部食わせるとどうなるのか、何が起きるのかが楽しみです。
原田 面白いですね! AIがどんなものを生み出すのか、どんな化学変化が起きるのか僕も楽しみです。本日はすごく刺激を受けました。ありがとうございました。
(構成=高田晶子)
▽明和電機(めいわでんき) 土佐信道プロデュースによる芸術ユニット。青い作業服を着用し、作品を「製品」、ライブを「製品デモンストレーション」と呼ぶなど、日本の高度経済成長を支えた中小企業のスタイルでさまざまなナンセンスマシーンを開発し、ライブや展覧会など国内のみならず広く海外でも発表。音符の形の電子楽器「オタマトーン」などの商品開発も行う。現在、北海道・札幌芸術の森美術館で「明和電機ナンセンスマシーン展in札幌」が開催中(3月3日まで)。
▽原田曜平(はらだ・ようへい) 1977年、東京都出身。マーケティングアナリスト。慶大商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーなどを経て、独立。著書に「Z世代」「シン世代マーケティング」「超バズテク図鑑」など。芝浦工業大学教授。