ワイセツ事件で無罪放免になった荒木一郎
「歌手としても俳優としても上り調子にあり、態度が生意気と思われていただけに、週刊誌はここぞとばかりにこき下ろした」(元芸能記者)
自身が作詞・作曲して歌った「空に星があるように」「今夜は踊ろう」「いとしのマックス」などが立て続けにヒット。映画でも新人男優賞を受賞するなど、まさに日の出の勢い。そんな絶頂期に落とし穴が待っていたのだった。
批判の矛先は母親で文学座の看板女優の荒木道子にまで向けられた。荒木が事件を起こしたのは息子を溺愛し、甘やかして育てたのが原因と書き立てた。道子が外を歩いていると見知らぬ人からいきなりツバを吐きかけられる目にも遭った。
無罪放免されたとはいえ、事件の後遺症は大きかった。荒木は映画「愛奴」から降ろされ、テレビの歌番組からも追放された。数年にわたって仕事が激減した。
一番の痛恨事は夫人から離婚を突きつけられたことだった。夫人は榊ひろみという芸名で活躍していた元女優。NHKドラマの共演をきっかけに周囲の反対を押し切って結婚した恋女房だが、事件から半年後の8月、置き手紙を残し、1歳3カ月の長男を連れて家を出てしまった。それから2人が戻ってくることはなかった。