「猫への輸血」には犬とは違うハードルの高さが…実は採血も難しい
前回はワンちゃんの輸血事情についてお話ししました。今回は、ネコちゃんの輸血について紹介しましょう。結論からいうと、ネコちゃんはワンちゃんのように簡単ではありません。
たとえば、がんの治療などで輸血が必要になると、まず輸血を必要とする側の血液型を調べます。ネコちゃんにもその判定キットがあり、それで分かるのはA型、B型、AB型のいずれか。かつて日本のネコちゃんはA型が7割といわれましたが、いまは洋ネコが増えたため、そんなことはいわれません。血液型が判明したら、同居ネコや友人のネコなどに同型の血液がいないか探すことになります。
ワンちゃんでは、輸血供給のための犬が動物病院に居候していることがあります。当院のビー太郎がそうです。しかし、ネコちゃんでは、まずいません。輸血用に採血を続けることで、腎臓の負担になり、寿命を縮める恐れがあるのです。実は当院にも、かつて輸血用ネコがいましたが、10歳でかなり早く亡くなったのを機に、動物愛護の観点からそのようなネコちゃんはいません。
実はネコちゃんの場合、採血も難しい。細い針や腕からの採血では、赤血球が壊れる溶血のリスクがあるのです。もし同型が判明したら、麻酔下での頚動脈採血になります。それでも1回の採血量は50㏄で、治療に十分な量ではなく、採血量の確保も難しいのが現実です。この方法で血液型の適合が判明すると、輸血する側は、2回の採血負担を余儀なくされ、それもよくありません。