MLBで深刻な“黒人離れ” 日本人選手は今後も好機が続く
■野球以外のスポーツに黒人が流出
それとともに、メジャーリーグにおける黒人選手の退潮も深刻だ。セントラル・フロリダ大学の調査では、2013年の開幕時点でロースターに入った黒人選手の割合は全選手の8.3%と、米国の全人口に占める黒人の割合(13.1%)を下回った。
これは、メジャーリーグがプロ入り後すぐに昇格することが難しい一方で、NFL、NBAなどがマイナーリーグを設けず、アマチュアでも超一流であれば即戦力として活躍できるという仕組みの違いが背景にあるといえよう。高校・大学の時点で最も優秀な選手はアメリカン・フットボールの奨学生として進学し、野球はバスケットボールに次いで3番目に優秀な学生が選ぶスポーツとなっていることも見逃せない。スポーツで身を立てたいと考える割合が高い黒人選手の多くが、野球以外のスポーツに流出しているのだ。
そうやって黒人選手がメジャーリーグでの存在感を弱めることは、黒人の観客離れにも拍車をかけている。今後も、各球団は黒人選手の減少によって生じた穴を埋めるために、ヒスパニック系やアジア系の選手を積極的に起用することになる。その際、ひとりを入団させれば球団の知名度や物品の販売などの向上を見込める日本人選手は、戦力だけでなく興行の面からも球団にとって都合のよい存在である。
田中将大、ダルビッシュ有など、故障によって戦線を長期にわたって離脱する選手が増えているものの、これからも球団に具体的な利益をもたらす日本人選手の需要が絶えることはないのである。
(アメリカ野球愛好会副代表、法大講師・鈴村裕輔)