【アジア杯直前特別寄稿】堂安律「20歳の若武者の素顔」
「おとん」「おかん」がエルネギーになっている
アジアカップが行われるUAEで調整中の森保ジャパン。現地入り2日目の4日は夕方から練習を始め、当日合流のDF吉田、MF中島、FW武藤の欧州組は練習を免除された。ハーフコートを使った3対2、7対7のミニゲームなどで目立ったのは、最若手・堂安のハツラツとした立ち居振る舞いだ。30歳オーバーのDF長友、DF槙野、さらに森保サッカーの申し子であるMF青山といったベテラン勢相手に物おじせず、常にニコニコ顔で練習メニューを消化していた。
「時に勝ちたい感情が判断を鈍らせることもあったが、いろいろ話をしてバランスが改善された」(U―20日本代表時代の内山篤監督=現日本サッカー協会技術委員)
これが、2016年のU―19アジア選手権(バーレーン)でのMVP獲得に、17年のU―20W杯(韓国)でのブレークにつながった。この大会では1次リーグ・イタリア戦で2得点。中でも4人抜き芸術弾は「まるでメッシ(バルセロナFW)」と世界を震撼させた。
大会直後の17年6月には、フローニンゲン移籍が決まって単身オランダに渡り、自炊しながらサッカーに明け暮れた。
「作ってる食べ物はひどいし、おいしくないけど考えてやってます。野菜嫌いだけど、アスリートとしてはダメなので、最低限取るようにしてます」と、プロのサッカー選手としての自覚を持ちながら生活している。そんな堂安のエネルギー源となっているのが「家族」である。報道陣の前でもよく「おかん」と「おとん」の話が出てくる。
家族仲がいいのは、実兄の憂(23=J3長野MF)も認めるところ。19年元日にもお互いのSNSで兄弟のツーショット写真を掲載したほどだ。
「律とはしょっちゅう連絡してます。漫画とゲーム(が好きなの)も僕の影響。漫画『ファンタジスタ』に出てくるマルコ・クオーレのゴールパフォーマンスも、よく真似してますね(笑い)」
弟がビッグネームになった場合、兄が重圧を感じるケースも少なくないが、堂安兄弟は違う。
「あいつは向上心の塊だけど、僕は気楽に構えるタイプ。今は『律の兄貴』って呼ばれることが多いけど、いつそれが消えるかな、と楽しみにしています。プレッシャーはゼロです」と屈託がない。オランダで孤軍奮闘している弟を全面的に応援しているのである。
5日(日本時間6日未明)にUAEで開幕するアジアカップで優勝の原動力となり、MVPを獲得して欧州ビッグクラブへの移籍を果たす――。
それが家族を喜ばせる最高のシナリオだ。