部長は他球団のスカウトからもこっそりと情報を収集する
■時にはカマをかけ
部長の口から出てきたのはライバル球団のスカウトの名前だった。自分の目で見られる選手には限界がある。なので現場に行くたびに選手の実力に加え、他球団のスカウトの眼力もチェック。この選手をどう見ているかなどと、ときにはカマをかけ、返ってきた答えによって、そのスカウトの選手を見る目がどんなものか把握しているというんだ。で、確かな目をもっていると判断したスカウトには自分が見られない選手の評価をこっそり聞くようになったという。
「おまえたちの目を信用してないわけじゃない。けれど、見逃すこともあるだろうし、スカウトには好みもある。なのでオレが見られない選手に関しては、信用できる第三者の評価もアテにしてるんだ」
こう言う部長は「それに……」と続けた。
「おまえは気に入った選手を過大評価するけど、中には、こんなのまでリストに入れるなよと言われるのが嫌で、選手を積極的に推薦しないスカウトもいるからな。それに見る目をもった他球団のスカウトはウチに引っ張ったっていいだろ?」
ニヤニヤしながら言う部長の言葉を聞いているうちに、今度の夏の甲子園に行くであろうお気に入りの投手の球速を10キロ増しで報告したことを思い出し、少しだけ首筋が寒くなったね。
(プロ野球覆面スカウト)