コロナ禍を利用した「マイナーリーガー大量解雇」の背景
現在、マイナーリーガーの大量解雇が進行中で、最終的に解雇者は1100人前後になる見込みだ。
一部では、これをコロナ禍の影響と報じているが、そうではない。昨年秋にマンフレッド・コミッショナーが打ち出した2021年にマイナー球団を162から120に減らすという方針に沿ったもの。コロナ禍で今季マイナーリーグの試合がすべて中止になったことと、マイナーリーガーの大量解雇はたまたまタイミングが一致しただけだ。
5年前にコミッショナーに就任して以降、マンフレッドが打ち出したマイナーリーグ対策は虐待に近いものだ。ニューヨーク・タイムズの記事によると、メジャーリーガーの平均年俸は1976年からの40年間で20倍になったのに対し、マイナーリーガーは1・75倍にとどまっている。その期間のインフレ率は約500%なので、マイナーリーガーの実質収入は激減してしまった。
その結果、マイナー選手の85%はサラリーが米国の法定最低賃金以下に。2014年以降、元マイナー選手たちが球団を相手取って損害賠償訴訟を起こすようになり、原告に名を連ねる者は2000人を超えた。このピンチをマンフレッドは議会に働きかけて、マイナー選手を季節労働者と認定する法案を通させることで切り抜けた。それによりマイナー選手の待遇を奴隷状態にとどめることに成功したかに見えた。