「ラブレス」桜木紫乃著
■女3代の壮絶な人生を描く
釧路市役所で電話交換手として働く小夜子は、札幌に住む従姉妹の理恵に頼まれ、数日前から連絡が取れないという伯母の百合江の家を訪ねる。生活保護を受け町営住宅で暮らす百合江は、位牌を握りしめて、今にも旅立とうとしていた。位牌には理恵も知らぬ名が刻まれていた。
昭和25年、道東の開拓村で育った百合江が中学生のとき、釧路の親戚に預けられていた妹の里実が実家に戻ってきた。しかし、里実と入れ替わるように百合江は奉公に出される。数カ月後、町に興行に来た旅芸人に魅せられた百合江は、弟子入りを志願して、一座に加わり町を後にする。
女3代の壮絶な人生を描いた、直木賞作家の原点ともいえる長編小説。
(新潮社 630円)