JA全中が安倍政権に狙われ、解体された理由
今年8月、全国農業協同組合中央会(JA全中)を一般社団法人化する改正農協法が、参院本会議で可決、成立した。“国内農業の競争力強化を図る”という名目の下、安倍政権が強引ともいえる手法で推し進めてきた農協改革。飯田康道著「JA解体」(東洋経済新報社 1500円+税)では、改革の内容とその背景を解説している。
1954年に設置されたJA全中は、JAグループの中心に位置する組織であるが、農産物の販売や生産資材の供給といった経済活動は行っていない。地域農協への経営指導や監査に加え、JAグループの司令塔としての役割が主だ。
しかし、JA全中の在り方は時代遅れとなった。地域の実情に即した農業が求められる昨今では、画一的な経営指導は意味をなさず、JAグループ内部からも、“JA全中は何もしていない”という批判が高まっていた。さらに、JA全中が手掛ける農協監査についても、公認会計士監査と比較して、質が劣り独立性も欠くという批判が、金融業界などから絶えなくなっていた。
これらの実情に加えて、今回の農協改革は実に60年ぶりの抜本改革であり、安倍政権はここに食いついたと、自民党幹部からも漏れ聞こえてくるという。つまり、これだけ長い間変わっていない組織改革を断行すれば、国民への格好のアピール材料となる。農協改革が、農業の成長産業化という政策的な狙いを超え、政治的なアジェンダに設定された面もあると本書。