「ルポ 老人地獄」 有料老人ホームの倒産は過去最高
朝日新聞経済部著「ルポ 老人地獄」(文藝春秋 780円+税)は、老人社会の実態を明らかにした社会派ノンフィクション。八方ふさがりの老後や、壊滅が加速する介護の現場を、余すことなくルポしている。
日本には、公的医療保険から治療代が出る国民皆保険がある。しかし、高齢者の病気では長期の入院を余儀なくされることが多く、公的医療保険ではカバーされない“ホテルコスト”がのしかかってくる。食事代1食260円、寝間着・タオル代1日350円、おむつ代1日650円などの費用で、さらに大部屋に空きがないと差額ベッド代として1日2000円以上が必要となる。
高齢の夫婦2人ともが入院する事態に陥れば、退職金や年金ではとても賄えず、生活は一気に崩壊する。退院後は生活保護を受けたり、質が悪く空きのある郊外の老人ホームに、夫婦別々に入所せざるを得なくなるケースも少なくない。
お金に余裕があって手頃な料金で民間の有料老人ホームに入れたとしても、ひと安心とはいかない。近年では有料老人ホームの倒産が相次いでいるためだ。東京商工リサーチの調べでは、老人福祉事業者の倒産は2014年で54件、15年では9月までに57件と過去最高を更新している。運営母体が倒産し、保証金が返ってこないと国民生活センターに訴えるケースも後を絶たないという。