「アラブの春」では説明できないシリアの混迷

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「サイレント・マイノリティ」下村敦史著

 日本の一般庶民にとってシリア問題は遠い世界の悲劇。欧州ではあれほど深刻な難民問題も、地理的な距離と世界一厳しい入管制度のために縁遠い話だ。本書はそのズレを逆手にとったミステリー。ヒロイン如月玲奈は正義心の強い難民調査官。シリア難民のナディームを担当し、アサド政権の暴虐を聞かされるが、彼の娘ラウアを面談すると、なんと答えは正反対。

「弾圧はなかった、お父さんはウソをついている」と言うのだ。前代未聞の事件に出くわした玲奈は同僚の高杉とともに捜査を開始。玲奈は信頼する先輩の長谷部を頼る。彼は義務感から入管職員を辞め、ジャーナリストとしてシリアにいる。他方、玲奈は人権派をきどる高慢なジャーナリスト山口にもつきまとわれ……。

 人物描写が紋切り型のきらいはあるが、時宜を得た社会派ミステリー。(光文社 1500円+税)

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