自動運転時代 近ごろ話題の人工知能。クルマはもうすぐ人間を追い越すか!?
「『自動運転』革命」小木津武樹著
学生時代から自動運転車に関心を持ち、いまは群馬大学「次世代モビリティ社会実装研究センター」で研究を続ける著者。業界では2020年が「自動運転技術の節目」といわれているという。自動車企業やIT産業が入り乱れる中、3年後までに新しい自動運転の概念を確立した企業がその後の流れをリードするだろうという。
著者自身は現在議論されている「運転支援」形式は先がない、と考える。この場合、機械の動きを人間のドライバーが監視することになるが、数分から数十分ならまだしも、人間は1時間も監視などできず、退屈してほかのことをしたくなることが実験結果で明らかだからだ。つまり自動運転なら、人間が運転以外のことをできるような設計をはじめから目指さないと本当に現実味のある自動運転はできないのだ。
では現実問題として自動車企業とIT産業ではどちらが強いのか。企業の目指す方向が明確で、「速度」「乗り心地」など製品イメージも明確な場合は縦割り組織のほうが強いと著者はいう。自動車企業はその典型。しかしいま価値観は多様化し、新しい変化への柔軟な対応力が必要。となるとIT産業か。
しかし交通事故対応はどうするのか、事故の際の責任は機械かドライバーか、といった問題もあり、IT産業だけでは対応不可だ。それでも3年後には高速道路上の合流や車線変更などレベル2の自動運転化は間違いないという。(日本評論社 1600円+税)
「2020年、人工知能は車を運転するのか」西村直人著
昨年、自動運転技術を開発する米ウェイモ社とホンダが共同研究を発表。日産はNASAとの提携を今年から本格化させた。2020年には自動運転技術を搭載した新型車を発売できると豪語する企業さえあるのだ。IT企業や電機メーカーでさえ参入を図る自動運転技術。
本書はその最先端の動向を、自動車メーカーを中心に取材。各社の主担当者への詳しいインタビューを収録したほか、国策として自動運転技術の開発を主導する内閣府にも取材している。今後、急速に日本の道路は従来型のクルマと自動運転化されたクルマ、そしてヒトが混在する空間となる。そのための法整備等もまた急務なのだ。(インプレス 1480円+税)
「ドライバーレス革命」ホッド・リプソンほか著、山田美明訳
もし世の中が自動運転車だけになったとしたら何がいちばん変わるか?答えは「クラクションが聞こえなくなる」。すべて人工知能で車が動くなら危険回避のために騒音を立てる必要はない(はず)だからだ。
町中を走るタクシーも、これまでは運転手、乗客とも見ず知らずで犯罪の懸念もあったが、自動運転なら心配はない。しかし果たしてそれだけがよい社会をつくるのだろうか、と著者はいう。
たとえば、子どもの送り迎えのために眠い目をこすって車を出す経験が、あとになって貴重な子育ての時間として感じられることはないだろうか? そんな問いを発するのは米コロンビア大で人工知能を使った製造業のデジタル化を研究する工学者。本書は彼とドライバーレス車や3次元プリンターなどの先端技術を専門とするジャーナリストの共著だ。(日経BP社 2000円+税)