「地下鉄駅」何致和著、及川茜訳

公開日: 更新日:

「地下鉄駅」何致和著、及川茜訳

 主人公は、地下鉄会社の運行管理課の主任・葉育安、45歳。地下鉄に飛び込む人が出るたび、早く電車を復旧させる業務を行う日常を送っている。凄惨な現場を何度も目撃してストレスを抱えつつも、作業手順通りに各種手配して現場を片付けさせ、ショック状態に陥った事故車両の運転手を慰め、代わりの運転手を手配する日々。一方プライベートでは、離婚後に一緒に住んでいる認知症の母と思春期の娘との間で神経が休まらない。そんな状況が続いていたある日、彼は自殺防止プロジェクトの長に任命され、飛び込み防止の有効なプランを考えることを余儀なくされる。啓発ポスターや美男美女のポスターの張り出しなど、あらゆる方策を試してみるのだが……。

 台湾の社会派小説の旗手として活躍する著者の初邦訳本。ギャンブル依存の男、SNSで失恋をさらされた中学生など、自殺した人々の独白を挟みながら、ストレスフルな主人公の日々がつづられていく。作中、主人公は日本の人身事故の多さにも触れている。国境を超えて、ままならない日々を送る人々への温かな目線が伝わってくる。

 (河出書房新社 3080円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  2. 2

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 3

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  4. 4

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  5. 5

    2025年は邦画の当たり年 主演クラスの俳優が「脇役」に回ることが映画界に活気を与えている

  1. 6

    真木よう子「第2子出産」祝福ムードに水を差す…中島裕翔「熱愛報道」の微妙すぎるタイミング

  2. 7

    M-1新王者「たくろう」がネタにした出身大学が注目度爆上がりのワケ…寛容でユーモラスな学長に著名な卒業生ズラリ

  3. 8

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  4. 9

    高市政権の積極財政は「無責任な放漫財政」過去最大122兆円予算案も長期金利上昇で国債利払い爆増

  5. 10

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手