「パロディーにあらず」 ウオッチャーが語る“タモリ芸”の原点
■相手が誰であれ楽しませようという姿勢
一連のタモリが得意とする芸はそれっぽく再現されるため、パロディーと称される場合が多い。しかし、近藤氏は「単なるパロディーではない」とこう続ける。
「タモリはブレーク当時、81年6月号の『広告批評』のインタビューで、自分が重視しているのは『どうしたら対象になりきれるか、その心境にまでいけるか』ということであって、それはパロディーとは違うだろうと語っていました。そもそもパロディーは特定の対象があって初めて成立するはずですが、タモリの芸のレパートリーには寺山修司など有名人のモノマネがある一方で、中国人やNHKのアナウンサーなど特定の誰かを対象にしないモノマネも多い。『ヨルタモリ』で素人参加のモノマネ番組のコントがありましたが、そこではタモリがどこの誰とも知れない素人に扮した上、しかも披露するモノマネの対象がことごとく誰も知らない……というか、実在しない人物ばかりという、あれなんかはまさに究極ですよね。いかにもそういう人が存在しそうだと思わせる。最近のお笑いの世界でいえば、友近がなりきっている演歌歌手の水谷千恵子など、その手のネタの原点がタモリの一連の芸にあることは間違いないでしょう」