映画「亀岡拓次」のモデル 宇野祥平は6畳一間の居候が原点
■ボートレース映像を中継する仕事で居眠り
すぐ東京に行こうという頭はなかったです。カメラを借りて、出演して、撮ればいいんだと安直に考えて、梅田の専門学校の放送映画学科に入りました。昼間、ボートレースで大型ビジョンに流す映像を中継するアルバイト、夜に学校、そのあと仲間と自主映画を撮っていくという暮らしです。1枠のボートを追いかけるべきところ、居眠りしてしまうという大失敗もありましたけど……。
初めて映画に出させてもらったのが、「絵里に首ったけ」(2000年、三原光尋監督)です。出るはずだった役者さんが降板したことで代役が回ってきたんです。この22歳の年に東京に向かいました。所持金は5万円。最初は百合丘の友だちの6畳のアパートに居候です。アオイスタジオという麻布十番の録音スタジオにある喫茶店で働かせてもらいました。その店の奥さんは、僕のキャベツの盛り付けを見て言ったんです。
「それでいいの? あなたのやり方は面白くない」って。もともと正解の盛り付けが頭にあって、答えを決めつけていないか、というのです。