普天間かおりが心動かされた 井上麻矢さんの沖縄への思い
それだけに3年前の初演に際しては、井上先生のご遺志を継いで麻矢さんはじめ、脚本の蓬菜(竜太)さん、演出の栗山(民也)さん、スタッフの皆さんがとにかく必死で形にされようと尽力されたことをうかがって、私自身も胸がいっぱいになりました。
その日はたっぷり2時間お話しし、帰り道で「たとえ選ばれなくても、麻矢さんとお会いできてよかったね」とマネジャーと話したのを今も覚えています。
そして晴れて出演が本決まりになり、今年2月には麻矢さんと伊江島に現存するガジュマルの木を見にいき、8月には井上先生の生まれ故郷、山形県川西町の遅筆堂文庫(井上ひさし氏の蔵書が寄贈されている)で、亡くなられる直前にお読みになられた沖縄民俗学の本を拝見して、改めて沖縄への思いを感じてきました。
稽古期間中、まるっきり演劇の経験がない私は、何から手をつけていいのかわかりませんでしたが、麻矢さんは私の疑問に耳を傾けて、しっかり答えてくれました。それがどれだけ心強かったことか。
この舞台を通じて、今も続く戦争の負の遺産を、私たちの国のこととして考え、少しでも改善できるよう知恵を出してもらいたい。そんな機会を与えてくださった麻矢さんに、本当に感謝したいですね。
◆11月27日まで こまつ座の舞台「木の上の軍隊」(新宿・紀伊國屋サザンシアター)。太平洋戦争末期の沖縄・伊江島を舞台に、米軍に追われてガジュマルの木に隠れた2人の日本兵の実話をもとにした物語。女優初挑戦の普天間さんはガジュマルに宿る精霊を演じる([電話]03・3862・5941)