「卑弥呼」歌手以外日本人で作り上げた“なんちゃって洋楽”
パッショナータ(1979年)
ユーロビートの「ダンシング・ヒーロー」が大ヒットする6年前。世の中は竹の子族、そしてディスコブームに沸いていました。
新宿などに大箱のディスコがたくさんでき、週末になると「アラベスク」や「ジンギスカン」など西ドイツ出身のグループの曲で若者たちがフィーバー! 当時、ビクターの邦楽部門にいた私は、その盛り上がりを横目で見て「自分もやらない手はない」と思いましたね。それで世に送り出したのが「卑弥呼」という和製ディスコ曲です。
歌手は「パッショナータ」というフィリピンの女性3人組。それ以外のスタッフは全員日本人でした。もちろん洋楽をイメージしてましたから、スタッフ名は全て英語風。例えば作詞の森雪之丞はジョー・レモン、作曲の川口真はマイケル・カーンといった具合です。要は“なんちゃって洋楽”なんですが、サウンドは真剣に作りましたよ。
当代一流のミュージシャンやエンジニアをフィリピンに連れて行き、1カ月もかけてアルバムを録音。アルバム収録曲はすべて英語です。そのうち「卑弥呼」などシングル曲だけ日本語版をつくり、ミステリアスなお面と宇宙服といういでたちで売り出したのですが……これが大ヒット! 見た目のインパクトもありますが、実はヒットするためのさまざまな“仕掛け”を施していました。