美女ファイターだった好川菜々さんは元王者の夫とジム運営
昼はOL、夜と週末にジム通いの生活
好川さんは1978年6月25日、大阪府羽曳野市生まれ。ボクシングと出合ったのは女子大時代の21歳。当時夢中だったマラソンのトレーニングの一環として始めた。
「プロになれるなんて、とてもとても。ましてやチャンピオンは別世界。だってデビューから3連敗して初勝利は4戦目でしたから」
だが、持ち前の負けん気に火がつき、隠れていた才能も開花。
2006年に第4回全日本アマチュア女子大会フライ級で初優勝を飾るや、その後、ライトバンタム級、フェザー級で優勝。3階級制覇を果たし、12年には第7回AIBA世界女子ボクシング選手権フェザー級でベスト16に食い込んだ。
「もちろんボクシングだけでは食べていけません。昼はOL、夜と週末がジムって生活でした」
プロデビューは13年8月18日。すでに35歳の“遅咲き”だったが4連勝し、5戦目で手にしたWBA女子世界ミニマム級タイトルマッチ(15年4月)は惜しくも敗れた。その間、トレーナーだった野上さんと結婚。ともに王者を目指した。
そして翌16年10月9日、WBO女子世界フライ級王座決定戦で李恩恵(韓国)を判定で破り、見事、チャンピオンベルトを獲得。17年4月の初防衛戦で敗れて王座陥落したものの、同12月16日、WBC女子世界フライ級暫定王座決定戦で判定勝ち。再び、戴冠した。
「でも勝ったものの、試合中に体力の限界を感じてました。それで翌年の4月、現役チャンプのままリングを降りることにしたんです」
一方、ボランティア活動に熱心なことでも知られている。
「13年に知人の紹介で筋肉が骨に変わる難病『進行性骨化性線維異形成症(FOP)』と闘病中の子を紹介され、支援するようになったのがきっかけです。以来、メキシコ地震の義援金とか自分たちができることをコツコツやってきました」
昨年12月には、それらの功績が認められ、日本ボクシングコミッションなどが社会貢献を表彰する「ダイヤモンドフィスト賞」を夫婦で受賞した。
「天職であるボクシングを通じて社会の役に立てるなら、こんなにうれしいことはありません」
2人の歩みはこれからも止まることはないだろう。
(取材・文=高鍬真之)