<61>工事中の壁に写真が…虚と実、こういうのにすごく惹かれるんだ
『今年』は6×7、中判(のカメラ)で撮ったんだけど、中判のカメラって、不自由でいいんだよ。ピント合わせたり、フィルム交換したり、所作が大変なの。でも、そういうのっていいんだよね。写真って、撮ってる「とき」だからさ。ワクワクしたり、脈が早くなるし。そういうのって、いいじゃない。
電通を辞めて、退職金でアサヒペンタックス6×7買って、三脚かついで歩いて撮った『東京は、秋』(1984年刊写真集)ね。東京を歩いて撮ったその頃から、なんにも変わらないんだよ。今は“クルマド”だけどね(荒木の造語のひとつで、自動車の車窓から街を撮影すること)。
■根本的に覗きたい!ってことなんだね
結局は出会いなんだね。街の中に入り込むっていうことね。ただ歩くだけ、写真を撮りに行くっていうんじゃなくてさ。ファインダーをパッて覗くと見えるんだよ。完全に覗きだから(笑)。そんで覗いたら、パッて撮る。だから、根本的に覗きたい!ってことなんだねぇ、ハハハ(笑)。
(構成=内田真由美)