著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<61>工事中の壁に写真が…虚と実、こういうのにすごく惹かれるんだ

公開日: 更新日:

 六本木で、六本木ヒルズや東京ミッドタウンの建設が始まった頃、そのあたりを歩いて、よく撮ってたんだよ。工事用シートをくぐって入ったら墓場だった写真もその頃だね(2000年撮影、連載59に掲載)。これも名作なんだよねぇ~。六本木の工事中の壁に写真が貼ってあるんだよ。ちゃんと地面も撮ってね、道端の草も写ってるんだよね。工事中の壁にビル群の写真。虚と実、虚実っていうか、こういうのにすごく惹かれるんだ。こういうの見ると街を歩きたくなるけど、こういうのを、わざわざ探していくわけじゃないのよ。「よく探しましたねぇ」なんて言われることがあるけど、そうじゃないって。たまたまなの。光景っていうか、場所や人に呼ばれるわけ。オレが人や場所を呼ぶっていうか、歩いてると出会っちゃうんだよ。

 この写真は、『今年』っていうタイトルの写真集(2005年刊、ワイズ出版)に入れてるんだ。「今年」っていうのがいいよなぁ。オレはせっかちだから、しょっちゅう発表したくてね、自分の写真を。昨日撮ったのを今日出すっていうくらいの感じで出したくてね。だから、『去年』(2002年刊)とか、『去年ノ夏』(2005年刊)っていうタイトルの写真集もあるんだよ。

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