著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<58>石原慎太郎さんは「ヨットに乗らないか」って言って、乗せてくれたんだよ

公開日: 更新日:

 この石原慎太郎さんは、雑誌の連載<実力者たち>で石原さんを撮ったときの写真なんだよ。でも、雑誌に載ったのはカラーで、もっと他の写真を選んでるから、この写真じゃないんだよね(雑誌『太陽』で荒木が各界の著名人を撮影、1975年2月号で石原慎太郎を特集。当時42歳、作家・衆議院議員)。

 このときね、ヨット乗らないかって言って、乗せてくれたんだよ。で、ヨットで沖のほうに行ったら酔っ払ってね。ヨットなんて乗ったことないからさ、船酔いでね。ダウンして船底で寝転んでたら、ホットウォッカをつくって持ってきてくれてね、二重酔いだよ(笑)。気をつかってくれたんだよ。

 石原さんに気にいられちゃってさぁ、撮影が終わったら話があるからって、一緒に行かないかって誘われたんだけど、その日は森山(大道)さん(写真家)と会う約束があったんだよね。本人は選挙ポスターを撮ってもらおうと思っていたんだって。あとで話があってね。でも、『太陽』に載った写真を見て、カンがいい人だからさ、その話はなくなったんだけどね。事務所だと思うけどアジアの地図が貼ってあったの、デッカイね。その前で、さっそうと立つ石原さんを、ちょっと裕次郎風に撮ったの。その写真が大きく載ったんだよ。その頃は、赤塚(不二夫)さんだから赤のバックで撮るとか、そういうことをやってる時期だったからね。で、コイツはおちょくるっていうのじゃないけど、皮肉るヤツだなと思われたんじゃないかなあ。

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