著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

生きるために政治は必要だが、生き心地を確かめるには文学が役に立つ

公開日: 更新日:

■新宿「風花」朗読会の夜

 だから昨年末に3回目の訪問となった新宿のバー「風花」で、同店常連の中森明夫さんと島田雅彦さんから朗読会出演を請われたぼくは、ふたつ返事でお受けしたのだった。出演の条件はただひとつ〈自作を読む〉。語りのプロではなく、書き言葉の主が自ら文章を読みあげたとき、そこに現れる(のか?)情景のかたちに興味があった。

 風花朗読会は2000年秋に作家の古井由吉が始めたもの。本人が毎回ホストと前座を務め、一人あるいは二人の作家のゲストが自作を読んで語りあう催しは10年以上も続いたという。日本で新型コロナウイルス感染症が確認された翌月の20年2月、古井さんは82歳で亡くなった。今回の朗読会は、感染状況はある程度落ち着いたという判断のもと、進行を文芸誌『新潮』編集長の矢野優さん、ホストを島田・中森両氏が分担する形で再開した第一回。中森さんの新作小説『TRY48』の出版直後という絶好のタイミングでもあった。

 満員御礼のなか、島田さんが登場。やや粘性の高い、だがズドンとした量感もある声で、古井さんの言葉も引用しつつ追悼文を読みあげる。いつも談論風発で騒がしい風花が一瞬にして静謐な図書館に。島田さんからマイクを受けたぼくは、詩人の田村隆一さんとの邂逅を綴ったエッセイ、天童よしみさんに提供した歌詞「帰郷」、そして当コラムから自選2本を朗読。「帰郷」に目を潤ませるお客さんが視界に入って、あやうくもらい泣きしそうになったのは、自作朗読会ならでは、かも。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」