森繁久彌さんに教えていただいた「歌は語るように、セリフは歌うように」
で、その後、「三男三女婿一匹」の第2シリーズで看護師の役で出演させていただきました。このときの森繁さんは主役の病院長の役。その奥さま役が山岡久乃さん。
もう、名前を聞いただけで、緊張で胃袋が口から出てきそうですよ(笑)。
でもね、森繁さんとお会いしたときの緊張感ってちょっと違うんですよ。アタシはミーハーだから、テレビを見ていてファンになったスターにお会いすると、すっごく緊張して口がきけなくなるんですけど、森繁さんはそんな感じじゃないの。簡単に言えばオーラが凄過ぎて、どちらかと言えば怖さに近いわね。絶対にしくじったらいけない、みたいな。言葉遣いひとつ間違えたら大変なことになってしまうぞ! みたいなところがある。挨拶にしても絶対に口先だけじゃいけないし、軽はずみなことをペラペラしゃべろうものならとんでもないことになっちゃう。そんな怖さがありましたね。
ビッグショーのとき、楽屋で気さくに話しかけていただいたんです。大事なことを教えていただいたのに、緊張し過ぎて危うく聞き逃すところでした。それは「歌は語るように、セリフは歌うように」ということ。この言葉はアタシの芸能界の原点のように、今でも心に刻み続けています。
でもね、怖いばかりじゃないんですよ。ビッグショーの翌年9月に「愚図」が発売されたんですが、実はこのときのレコードの題字を書いてくださったのが森繁久彌さんだったんです。天国の森繁さんにあらためて、ありがとうございました。
(構成・藤井優)