トルコ地震の被害は対岸の火事ではない…「日本は厳しい耐震基準があるから大丈夫」はどこまで本当か

公開日: 更新日:

数百年に1度の地震にも耐える新基準

 では、なにがどうであれば安心なのか。2000年に始まった「住宅性能表示制度」の活用も考えたい。いわゆる「2000年基準」と呼ばれるものだ。耐震性については3つのランクがある。

「まず耐震等級1とは、『住宅の品質確保の促進等に関する法律』によって定められ、数百年に1度の地震(震度6強~7)でも倒壊や崩壊しない耐震性を有します。耐震等級2は、その数百年に1度の地震力の1.25倍、耐震等級3は1.5倍までの耐震性能があることになります」(住宅性能評価・表示協会の担当者)

 数百年に1度の地震にも耐えるというのであれば安心な気もするが、あくまで倒壊や崩壊によって建物の下敷きにならないというだけ。建物が「損傷しない」とまでは言っていない。地震の後に補修が必要だったり、場合によっては建て替えになる可能性もある。

 最近よく聞く〈長期優良住宅〉は耐震等級2以上が認定の基準で、災害時の避難所として活用される小学校などの公共施設が耐震等級2以上となっている。さらに上の耐震等級3は、損傷被害が少ないため震災後も住み続けられ、ある程度の大きな余震が来ても持ちこたえられる耐震性能がある。消防署・警察署の多くが、この等級3で設計されている。

 熊本地震では2度目の地震で倒壊した住宅もあった中、この耐震等級3の住宅は大丈夫だった。

「耐震等級を上げるには筋交い、構造用合板と呼ばれる材料で強度を高めていきますが、等級1を等級2にするには壁量(耐震壁や構造耐力)を1.55倍、等級3にするには1.86倍が必要という計算になります。屋根材や太陽光パネルなどが重い場合は、さらに壁量が必要になります」(ある1級建築士)

 耐震等級3の住宅を推奨する三井ホームは、実物大の一戸建てを振動実験し、震度7でも連続60回耐え抜いたとアピールしている。他の大手ハウスメーカーも、ほぼ耐震等級3に対応しているので、新築の際は検討したい。

 東京都が昨年、10年ぶりに首都直下地震等の被害想定を改定した。最も大きな被害を見込む「都心南部直下地震」(M7.3)は死者数が約6200人、建物被害は約19万4400棟で、耐震化率がアップしたとして死者数は前回想定より3割減った。

 だが、トルコ・シリア大地震のように、大きな地震が続くことは想定されていない……。

■関連キーワード

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    年収1億円の大人気コスプレーヤーえなこが“9年間自分を支えてくれた存在”をたった4文字で表現

  2. 2

    くら寿司への迷惑行為 16歳少年の“悪ふざけ”が招くとてつもない代償

  3. 3

    映画「国宝」ブームに水を差す歌舞伎界の醜聞…人間国宝の孫が“極秘妻”に凄絶DV

  4. 4

    “やらかし俳優”吉沢亮にはやはりプロの底力あり 映画「国宝」の演技一発で挽回

  5. 5

    山尾志桜里氏“ヤケクソ立候補”の波紋…まさかの参院選出馬に国民民主党・玉木代表は真っ青

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希 球団内で「不純物認定」は時間の問題?

  2. 7

    フジテレビCM解禁の流れにバラエティー部門が水を差す…番宣での“偽キャスト”暴露に視聴者絶句

  3. 8

    国分太一は“家庭内モラハラ夫”だった?「重大コンプラ違反」中身はっきりせず…別居情報の悲哀

  4. 9

    輸入米3万トン前倒し入札にコメ農家から悲鳴…新米の時期とモロかぶり米価下落の恐れ

  5. 10

    慶大医学部を辞退して東大理Ⅰに進んだ菊川怜の受け身な半生…高校は国内最難関の桜蔭卒