停電、略奪、トイレ不可…首都直下地震の後に「身の回りで起きる」これだけのこと
伊豆諸島の地震活動が活発化している。専門家は「南海トラフ巨大地震や首都直下地震との関係性はない」との見方をしているが、そんな中、東京都が「首都直下地震等対処要領」を改定した。職員や警察、消防、自衛隊など役割分担や手順をマニュアル化したものだ。首都直下地震が来たら“その後”はどんな状況になるのか。
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震災後の生々しい状況が描かれている。
都は、昨年公表した「東京都の新たな被害想定」(東京都防災会議)を基に首都直下地震等対処要領を改定し、同時に今後30年以内に70~80%の確率で起きるとされる南海トラフ巨大地震を想定した「南海トラフ地震対処要領」を新規に策定した。
いよいよ待ったなしの地震に対し対策の本腰を入れたと言えそうだ。
「対処要領は、災害時における都の態勢や初動対応を規定したもので、主に発生後72時間までの応急対策活動に関する内部的な計画です。デジタル技術を活用した防災DX推進により、情報の集約や分析などを効率化しています」(東京都・防災対策課担当者)
南海トラフ巨大地震での都の主な役割は島しょ部の津波被害への応急対策になるが、職員が忙しくなるのはやはり首都直下地震が起きてしまった時だ。
震災後2時間だけでも職員には膨大な数の業務リストがあり、「災害対策本部設置」や「指令情報室内の通信機器の起動」から、「知事メッセージ発表」「災害名の命名」といったものまである。全国に向けて応援要請も行い、警察は応援を含め9万5000人、消防が6万6900人、自衛隊は11万人の確保を目指す。首都だけあって他に類を見ない総動員体制が敷かれるのだ。
「想定外のこともあるでしょうが、あらかじめ対処の方法を規定しています。今回の改定は、昨年出た被害想定を基につくられました」(前出の都担当者)
■想定死者数は最大で6148人
その被害想定では、「都心南部」「多摩東部」(共にM7.3)を震源とするものが最も被害が拡大するとみられている。都心南部直下地震のケースでは、死者6148人、負傷者9万3435人、建物被害19万4431棟、避難者は約299万人、帰宅困難者は約453万人となっている。
死者は東京都の昼間人口1675万人の0.03%(約3万人に1人)ほどだが、長年の減災への取り組みで、揺れによる死者数は10年前予測の5100人から3200人へ、火災による死者数は4100人から2500人、家具転倒による死者数も260人から240人へ確実に減っている。
■3日後から避難所で死亡する事例が増加
ただし、地震の本当の意味での正念場はここから始まる。被害想定にある身の回りで起こり得る災害シナリオには、早くも発生から3日後から「高齢者や既往症を持つ人などが、避難所等の慣れない環境での生活により、病状が悪化し、死亡する事例が増加」すると書かれている。
では、他にはどんなことが身の回りで起こるのか。まずは「インフラ」だ。電力は広範囲で停電となり、徐々に電気が戻るのは3日後から。その後も計画停電が継続されたり、大部分が元通りになるのは1カ月以上も先の話となる。少なくとも停電が1日、2日で解消されないことだけは覚えておきたい。
水道は断水や濁水が解消するまでに1週間以上、下水は排水管などの修理が終了するまで集合住宅ではトイレの利用はできない。マンションやアパートの住人は1カ月以上もトイレ不可という状態が続く可能性がある。通信については、1週間程度は音声通話がつながりにくかったりメールやSNSなどの大幅な遅配が発生する。