「ふーん」「へえ」で会話を終わらせない 初対面の人とも信頼が築ける質問とは?
「自分の声が嫌い」という人は少なくない。声・話し方の総合プロデューサーの下間都代子(しもつま とよこ)氏がSNSを使って約2000人にアンケートを取ったところ、全体の約7割にのぼった。理由として多かったのは「声が良くないから」。下間氏は「多くの人が『良い声』と『悪い声』の定義を『声がきれい』を基準にしているように思いますが、良し悪しに大きくかかわってくるのは『話し方』のほう。話し方一つで、あなたの声は良くも悪くも印象が変わってしまいます』と言う。阪急電鉄の車内放送の”あの声”で関西では知られる下間氏の著書『「この人なら!」と秒で信頼される 声と話し方』(日本実業出版社)から、今回は初対面で信頼を得られる話し方を紹介します。(本文から一部引用・再編集しています)
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質問は的確に良いタイミングでできると「信頼」に直結する。まずは簡単なこと、無難なことで構わないので質問をしてみよう。私はワインが好きで、友人たち、ときには1人でワインバーに飲みに行く。そして、飲みに行った店で、隣に座った知らない人と話をする。
そんなとき、最初に話しかける際に一番無難な質問はこれだ。
「この店にはよく来るのですか?」
このとき、私はその人と特に「信頼関係」を築こうとしているわけではないので、その後、もっと関係を深める質問をするかどうかは場合によるのだが、こんなありきたりな質問からでもコミュニケーションはスタートさせられる。あくまでも最初の軽いやりとりとしての質問だ。
この最初の質問のあと、もしも、「もっと仲良くなりたいと思ったとしたら」「スピーディーにその人と打ち解けたいとしたら」次にどんな質問をすれば良いだろうか?
お洒落なワインバーのカウンターにて、という設定で考えてみよう。
バーで隣り合った人と会話を弾ませるには?
「この店にはよく来るのですか?」
という質問に対して次の3つの答えが返ってきたとする。
①「はじめて来ました」
②「はい、ときどき(よく)来ます」
③「2回目です」
さて、あなたはさらにどう返答するだろうか。
「そうなんですね」「そうですか」「へえ」
この3つの返答は、相手の答えのどれにでも対応できるリアクションである。しかし、
これだけで終わってしまったら…『以上。会話終了』、である。
もう少し話をしたかった場合、次の話題を探すだけでも疲れてしまう。
もしも私なら、先ほどのリアクション「そうなんですね」「そうですか」「へえ」のあとに、次の1~3の言葉を付け加える。
自分「この店にはよく来るのですか?」
1.相手「はじめて来ました」
自分「そうですか。気に入りました?」
2.相手「はい、ときどき(よく)来ます」
自分「へえ、この店がお気に入りなんですね」
3.相手「2回目です」
自分「そうですか。また来ちゃったんですね」
この返答、どうだろうか。
「ふーん。そういうのもあるよね。で?」と思ったあなた。実は私がこのような返答をしたのには「ある理由」があることをお気づきになっていないようだ。
今の私の返答を受けて、相手がさらにどんなリアクションをするか想像してみて欲しい。細かいシチュエーションは脇に置いておいて、素直になんと答えるか?
もう一度、一連の流れで見てみよう。
「この店にはよく来るのですか?」
1.の場合
「いえ、はじめて来ました」
「そうですか。気に入りました?」
「はい、気に入りました」
「この店、雰囲気良いですよね」
「そうですね」
2.の場合
「はい、ときどき(よく)来ます」
「へえ、この店がお気に入りなんですね」
「はい、そうなんです」
3.の場合
「2回目です」
「そうですか。また来ちゃったんですね」
「はい、そうなんです」
この3つの例で何が言いたいかというと、どの返答にも、相手が「はい(イエス)」または「そうです」「そうなんです」という【肯定の言葉】を使っているということ。
人は自分の気持ちを言い当てられたり、代弁してもらえたりしたときに「はい」または「そうです」「そうなんです」と言う。
そして、「はい」「そうです」「そうなんです」と【肯定の言葉】を何度も言うことで、相手に対して「この人は私の気持ちをわかってくれる人だな」「感覚が似ているな」と思い始め、次第に相手に対して「共感」を覚える。
バーで隣り合わせになった初対面の人に対して、家はどこだ? 仕事はなんだ? と根掘り葉掘り聞いてコミュニケーションを図るよりも、相手が「はい」「そうです」「そうなんです」など、答えやすい質問を投げることからスタートすると、心の扉は開かれやすくなる。