ヤクルト奥川ホロ苦デビュー…怪物の現在地と収穫と課題
「来季は二軍ローテで結果を」
実際、ノースローを耐え抜いたことにより、プラスになった部分もあるようだ。ヤクルトOBが言う。
「球団は奥川の育成に慎重を期している。投げようと思えば投げられる状態ではあったようだが、無理をすると肩肘の故障につながりかねないと判断し、ノースローにした。今季は二軍戦7試合登板で最長5イニングにとどまり、球数も最大で56球しか投げていません。奥川は新人合同自主トレの最初のキャッチボールから、一球一球、かなり力を入れて投げていた。遠投も素晴らしい伸びを見せていた。ただ、体が出来上がっていない段階でそれを続けると、どうしても肩や肘に負担がかかる。プロで1年間、継続して投げるとなると、肩肘回りや体幹、下半身の強化とともに、投球時に力の強弱をつけるなど、ペース配分が必要になる。これに関しては、この1年間でモノにしつつあるようです。体重も入団時から5~6キロ増え、パワーアップしています」
変化球に関してはまだ、ほとんどメスを入れていないという。前出のOBが続ける。
「カーブのように大きく曲がりすぎるスライダーなど、変化球には課題がある。ただ、コーチが変化球の握り方やリリースの仕方などについてあれこれ指導すると、練習を含めて球数が増え、かえって肩肘に負担がかかりかねない。変化球を磨くのは、肘の炎症が再発することなく、ローテーションの中で一定数以上の球数やイニングを投げられるようになってからでも遅くないという判断です。裏を返せば、成長の余地は十分にあるといえます」
■「一軍定着は早くて来季後半」
そうなると、奥川が一軍に定着するまでに、どれくらいの時間がかかるのか。実際、この日の投球を見ても、スタミナや細かい制球など、まだまだ課題はありそうだ。別のヤクルトOBが言う。
「今後の育成方針については、フェニックスリーグなどを含めて判断するようです。チーム内には、来季はまず、二軍のローテーションで5イニング以上、100球程度を継続して投げられるようにすることが先決、との意見もある。体ができていない状態で、昨夏の甲子園で最速154キロをマークしたキレのある速球を投げ続ければ、肩肘に大きな負担がかかる。無理をすれば、取り返しのつかない故障を招く可能性もある。奥川が一軍でバリバリ投げられるようになるのは、二軍で継続して結果を残してからになるでしょう。普通にいけば3年目、早くても来季の後半くらいではないか」
素材が一級品であるのは言うまでもないが、長い目で成長を見守る必要がありそうだ。