ロシア「愛国主義教育」による道徳の欠如…スポーツ界もドップリ、「Z」マーク装着の波紋

公開日: 更新日:

「Z」マークといえば、ロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻を支持する象徴。ロシア国内では車やバス停など至る所に「Z」が拡散している。

■プルシェンコ以外にも「Z」マーク

 スポーツ界も例外ではない。先日、体操の種目別W杯(ドーハ)に出場し、平行棒で銅メダルを獲得したロシアのイワン・クリアクがユニホームに「Z」マークのテープを貼った問題に対し、国際体操連盟(FIG)は体操倫理財団へ懲戒手続きを要請した。

 クリアクは昨年、ロシア軍の軍事訓練を受けたという。この種目で優勝したウクライナ選手とは握手することなく降壇。本人はロシアのテレビ局に「もう一度チャンスがあれば同じことをするだろう」と語ったという。

 戦争が泥沼化する中、ロシアのアスリートによる愛国メッセージが異彩を放っている。トリノ五輪フィギュアスケート男子シングル金メダリストの“皇帝”プルシェンコは最たるもの。自身のSNSで「大統領を信じている」「何も恥じることはない。ロシア人であることを誇れ。人種差別をやめろ! 虐殺をやめろ! ファシズムをやめろ!」と投稿するなど物議を醸している。

幼児にナイフの使い方を指南

 暴挙を犯す国とそのトップに対するロシア国民の揺るぎなき忠誠心の礎は、ロシアに長く深く根を下ろす愛国主義教育にあるという。ロシア情勢に詳しい筑波大教授の中村逸郎氏が言う。

「日本の学校で当たり前のようにある『道徳』の授業はロシアには存在しません。あるのは『愛国教育』だけ。日本では、地下鉄や電車に乗るとき『他のお客さまのご迷惑になるため……』というアナウンスがありますよね。ロシアの人たちはこれに驚き、疑問を抱く。つまり、他の人の迷惑を考えるというのが一般的な道徳とすれば、そういうものは持ち合わせていない。ロシアでは法律で禁じられていないことは何をやってもいいという考えが根強いのです」

 銃社会ではない日本では考えられないが、学校では退役軍人による機関銃のレクチャーが行われているそうだし、子どもに銃の組み立て、分解の仕方を学ばせようとする動きすらあった。近年は愛国主義教育が強化されているのが実情だ。

「私が2020年2月にモスクワへ行ったときは、コサックと呼ばれる先兵隊の人たちが街中の公園で3~4歳の子どもに対して刃物の使い方を教えていました。『こうやって使うんだ、握ってみろ』と言って、外敵から守る方法を指南しているのです」(中村氏)

 日本でも人気の女子フィギュアスケートのザギトワらがそんな教育を受けていると想像したらゾッとする。 

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • その他のアクセスランキング

  1. 1

    スポーツ界に時代錯誤の事案が多発する根本原因…新聞社後援イベントは限界と危うさを孕んでいる

  2. 2

    GPシリーズ初戦SP、坂本花織は2位発進も…集大成の今季に待ち受ける茨の道

  3. 3

    出雲駅伝7位完敗の青学大・原監督に直撃「ばけばけ大作戦の点数? 0点でしょう!(苦笑)」

  4. 4

    JOC山下泰裕会長の療養離脱からはや1年…三屋裕子代行でも“無問題の大問題”

  5. 5

    極めて由々しき事案に心が痛い…メーカーとの契約にも“アスリートファースト”必要です

  1. 6

    広陵高の暴力問題が話題だが…私は世羅高3年で主将になって、陸上部に蔓延する悪習を全て撤廃した

  2. 7

    柔道五輪金メダリスト・松本薫さんは2週に1度ファミリーフィッシングで堤防へ「胸の奥には大物への渇望がくすぶっています」

  3. 8

    テニスの団体戦を愛するキング夫人はドジャースの共同オーナー 大谷獲得でも猛プッシュ

  4. 9

    大惨敗に終わった世陸を「トリプルミッションの好循環」(勝利、普及、資金)の観点から考えた

  5. 10

    “ミスター・ラグビー”と呼ばれた松尾雄治さん 西麻布で会員制バーを切り盛り「格安なので大繁盛だよ」

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  2. 2

    ドジャース大谷翔平が直面する米国人の「差別的敵愾心」…米野球専門誌はMVPに選ばず

  3. 3

    Snow Man目黒蓮と佐久間大介が学んだ城西国際大メディア学部 タレントもセカンドキャリアを考える時代に

  4. 4

    ポンコツ自民のシンボル! お騒がせ女性議員3人衆が“炎上爆弾”連発…「貧すれば鈍す」の末期ぶりが露呈

  5. 5

    高市新政権“激ヤバ議員”登用のワケ…閣僚起用報道の片山さつき氏&松島みどり氏は疑惑で大炎上の過去

  1. 6

    クマが各地で大暴れ、旅ロケ番組がてんてこ舞い…「ポツンと一軒家」も現場はピリピリ

  2. 7

    田村亮さんが高知で釣り上げた80センチ台の幻の魚「アカメ」赤く光る目に睨まれ体が震えた

  3. 8

    自維連立が秒読みで「橋下徹大臣」爆誕説が急浮上…維新は閣内協力でも深刻人材難

  4. 9

    ラウールが通う“試験ナシ”でも超ハイレベルな早稲田大の人間科学部eスクールとは?

  5. 10

    「連合」が自民との連立は認めず…国民民主党・玉木代表に残された「次の一手」