週末に読みたいこの1冊
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「まつらひ」村山由佳著
浅間山の麓、長野県御代田町に嫁いだ舞桜子は、幼い頃からひたすら好きだった雅文と結ばれ、娘にも恵まれた。 家業の農園も順調で、姑ともうまくいっており、あまりの幸せに不安を覚えるほどだった。 …
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「満洲コンフィデンシャル」新美健著
昭和15年、憲兵を殴って海軍を追い出された元士官候補生・湊春雄は、満洲鉄道本社へ飛ばされ、神戸から船に乗り大連にやってきた。 到着したばかりの春雄を待っていたのは、その足で新京の満洲映画協会…
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「マーダーズ」長浦京著
阿久津清春は28歳の商社マン。会社に戻る途中、路地裏から女性の悲鳴が聞こえた。駆け付けると、男がナイフで女を切りつけている。思わず止めに入ると、男の服からガソリン臭がする。そこへ相手の女が男にスタン…
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「ゴールデン街 コーリング」馳星周著
主人公は、北海道の田舎から上京してきた大学生の坂本俊彦。コメディアンであり、ハードボイルド作家としても名高い斉藤顕の書評のファンだった坂本は、編集部付に送った斉藤へのファンレターが縁となって、彼に誘…
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「残心」鏑木蓮著
国吉冬美は京都の地元情報誌のライター。漫画家になるのが夢だったが、いまは別の目標を持っていた。人生の「枯」と「衰」にスポットを当てたルポルタージュで人気を得ている作家・杉作舜一の作品にすっかり魅了さ…
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「僕の戦後舞台・テレビ・映画史70年」久米明著
大正13年に生まれ、94歳の今も現役として活躍する著者が、自らの演劇人生をつづった自伝。戦後の混乱期に息を吹き返した新劇の舞台を見て芝居の面白さに目覚め、東京商大の演劇研究会の初舞台、演劇集団「ぶど…
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「君は玉音放送を聞いたか」秋山久著
日本でラジオ放送が始まったのは1925年。その年の受信契約数は5455件。それが敗戦の年の45年3月には747万件と飛躍的な伸長ぶりをみせた。特筆すべきは、この20年間は満州事変、日中戦争、太平洋戦…
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「花折」花村萬月著
主人公は、画家の父と性にあけすけな母のもとで育った鮎子。父の下で幼児の頃から絵の英才教育を受け、当然のように東京芸術大学に進学した。鮎子に熱い視線を寄せる同級生には全く興味が持てず、興味をひかれたの…
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「老いてますます官能的」嵐山光三郎著
著者いわく、官能とは感覚的想念であり、人間のこころに本来的にそなわっている歓喜、永遠不変のリズムである。とはいえ、その中身は年齢と共に変化していく。かつては全国200余の温泉をめぐったり、東京中の古…
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「群青の魚」福澤徹三著
特養老人ホーム「敬徳苑」で働く清水穂香は、2歳の息子を抱えるシングルマザー。父親は行方知らずで母親は病気で亡くなっており、夫も高齢者詐欺の首謀者で前科者だったと知り離婚して、きつい介護の仕事で身を立…
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「標的:麻薬王 エル・チャポ」アンドルー・ホーガンほか著、棚橋志行訳
去る11月5日、麻薬王エル・チャポの裁判がニューヨークの連邦地裁で開始された。チャポはコカイン、ヘロイン、大麻、メタンフェタミンなどを米国に密売し、1兆5400億円もの収益を上げたとされる。証人保護…
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「綿畑の小屋」ジム・トンプスン著、小林宏明訳
物語の舞台は、東部オクラホマ。19歳のトミーは、洪水で両親を失い、養父のカーヴァーと同じく養子のメアリと一緒にこの地に移住してきた。 養父は金持ちのマシュー・オンタイムから小さな土地を買った…
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「どんまい」重松清著
三上洋子40歳、夫の浮気が原因で離婚したばかり。心機一転、再出発しようと思っていたところ、地元の草野球チーム、ちぐさ台カープがメンバーを募集しているのを知る。しかも「年齢・性別ともに不問」。洋子は小…
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「人間狩り」犬塚理人著
物語の発端は、20年前に起こった小学生女児殺人事件。 被害女児の自宅に、少女の両目が送り届けられるという残忍な事件で、加害者となった14歳の少年の家からは、犯行の様子を記録した映像が押収され…
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「辺境メシ」高野秀行著
辺境探検家として世界各地の秘境に足を運んできた著者は、旅をしている中で、自ら進んで、あるいはやむを得ず、ご当地特有の「メシ」にありついてきた。本書には、これまで著者が食してきた奇食珍食の数々が紹介さ…
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「操られる民主主義」ジェイミー・バートレット著、秋山勝訳
テクノロジーの進化によって、私たちはさまざまな情報にアクセスすることが可能になった。しかし当初自由をもたらすと思われていたテクノロジーによって、自由で民主的な社会の基盤は破壊されつつあるという。 …
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「会計の世界史」田中靖浩著
会計の歴史というと、数式や専門用語が出てきてとっつきにくそうなイメージだが、本書はそれを見事に裏切って、楽しい読み物となっている。 まず登場するのはルネサンスの天才、レオナルド・ダビンチ。公…
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「蕪村 己が身の闇より吼て」小嵐九八郎著
江戸時代の中頃、将軍吉宗の時代。大坂湾から京都へ続く淀川沿いの土手を一人の少年が裸足で走っていた。その着物の袖と襟元には赤黒い染みが広がっている。15歳になる少年は人をあやめて故郷から逃げ出している…
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「つながっているのに孤独」シェリー・タークル著、渡会圭子訳
コンピューターが登場し、人工知能(AI)が持ち得る知能についての議論が盛んにされていた頃から約30年が経過した今の時代、テクノロジーは私たちの生活に欠かせないものとなっている。しかしスマホ、SNS、…
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「君は玉音放送を聞いたか」秋山久著
日本でラジオ放送が始まった1925年以降、満州事変、日中戦争、太平洋戦争と相次いで起こった戦争を、ラジオはどのように伝えたのか。本書は、その歴史のスタート時から国策放送への道を突き進み、ついには自ら…