「君は玉音放送を聞いたか」秋山久著
日本でラジオ放送が始まった1925年以降、満州事変、日中戦争、太平洋戦争と相次いで起こった戦争を、ラジオはどのように伝えたのか。本書は、その歴史のスタート時から国策放送への道を突き進み、ついには自ら積極的に戦争協力への道を歩んでいったラジオ放送の姿を追ったものだ。
玉音放送を巡って起こされたクーデター未遂事件、葬送行進曲になった「海ゆかば」などの誕生秘話、政府による検閲からGHQによる検閲へと姿を変えた終戦後などを紹介しながら、戦争に果たしたラジオの役割の大きさを浮き彫りにしていく。
著者は、PKO活動におけるメディアの取材自粛依頼や、南スーダンにおける陸上自衛隊の破棄された日報問題など、言論統制の兆候が見え始めていることを憂慮し、「戦争が起これば最初の犠牲者は真実だ」という米国上院議員の言葉に触発されて本書をまとめたという。
ジャーナリズムの在り方について、考えさせられる一冊になってる。
(旬報社 1600円+税)