「まつらひ」村山由佳著

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 浅間山の麓、長野県御代田町に嫁いだ舞桜子は、幼い頃からひたすら好きだった雅文と結ばれ、娘にも恵まれた。

 家業の農園も順調で、姑ともうまくいっており、あまりの幸せに不安を覚えるほどだった。

 気がかりといえば、初夏から夏の終わりにかけて、ちょうど「龍神まつり」が近づく頃に、決まって夫と激しくもつれ合う艶夢を繰り返し見ることだ。ふだんはおとなしい夫が夢の中ではみだらに攻め立てる。夫にも打ち明けられずに悶々とする舞桜子は、ついに夢の正体を知ることに……。(「夜明け前」)

 23歳の若さで逝った、歌手の〈クズケン〉こと葛巻剣児。幼馴染みの友春は剣児を〈神〉と崇めていたが、剣児の引っ越しでしばらく連絡が途絶える。再会したのは2人の故郷・岩手県黒石町で行われる蘇民祭。

 日本3大裸祭りの1つで、ふんどし姿の裸の男たちが激しくぶつかり合う。剣児のたくましい裸体に見惚れる友春だが……。(「約束の神」)

 浅草の四万六千日、柳川の白秋祭、野沢の道祖神祭り、相馬野馬追――全国の祭りを舞台に、多様な性を描いた短編集。

(文藝春秋 1500円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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