「老いてますます官能的」嵐山光三郎著

公開日: 更新日:

 著者いわく、官能とは感覚的想念であり、人間のこころに本来的にそなわっている歓喜、永遠不変のリズムである。とはいえ、その中身は年齢と共に変化していく。かつては全国200余の温泉をめぐったり、東京中の古本屋を散歩したり、廃線となった鉄道の歌枕を訪ねる旅をしたりと身をもって官能を味わってきた著者だが、そうした官能の記憶は窯変し、書き換えられていく。体力が衰え、かつてできたことができなくなる。親しい友人が他界していく。すると官能が冴え、光や音や色などが澄んでくる……。

 本書には、老いてなお官能を全開にして人生を楽しんだ人たちのエピソードが登場する。延命治療をせずに理想的な人生の終わり方を成し遂げ105歳の天寿を全うした日野原重明。99歳にして個展を開く彫刻家の関頑亭。破天荒な生き方を貫いた民俗学者、南方熊楠。世間の「不倫」という指弾を浴びながら愛と欲望に忠実に生き抜いた女性たち――岡本かの子、福田英子、佐々城信子、波多野秋子、管野須賀子、宇野千代。

 つい最近、九死に一生を得たという著者だが、無事回復。新たな官能生活が始まっているようだ。

 (新講社 1400円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…