タクシードライバー哀愁の日々
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(36)タクシーを喫煙所代わりにしたお客がいた 愛煙家の気持ちもわかりますが…
前にも書いたことだが、お客との会話においてタクシードライバーが忘れてはならないことがある。それは「政治と宗教と野球の話はしない」だ。ドライバーとお客という見知らぬ同士の、それも一瞬の関係であっても、…
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(35)交通違反で捕まることはドライバーなら絶対避けるべきだが…悔しい出来事の一部始終
「あれっ、なんでこんなところに止めているんだろ?」 大通りと交差する狭い道の出口で停車している白バイをよく見かける。そして、白バイが急にサイレンを鳴らしはじめて急発進する。ふだんクルマを運転す…
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(34)無言が喜ばれたり、言葉足らずで怒られたり…お客との「会話の呼吸」は本当に難しい
長くこの仕事をつづけていても、接し方のむずかしいお客がいる。こちらが丁重に行き先、経路を尋ねても、面倒くさそうに答えるお客もいる。終始横柄な態度を崩さない。こちらを見下しているのかもしれない。そんな…
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(33)深夜のコンビニ駐車場…私の前でベンツが急ブレーキで止まった
「パイロットになりたい」「新幹線の運転士になりたい」「バスの運転士になりたい」などという子どもはいるが、「タクシーの運転士になりたい」という子どもの話を、私は聞いたことがない。パイロット、新幹線の運転…
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(32)77歳の“若手ドライバー”に会った!「免許返納」をしたくてもできない人もいるのだ
いま、タクシー会社のドライバー不足が深刻だ。所有しているタクシーをフル稼働させることができない状態が続いているようだ。たとえて言えば、働き者の“鵜”の数は揃っているのに、“鵜匠”が不足しているという…
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(31)「もし運転手さんに娘さんがいたら」…超美人ホステスさんからの「人生相談」
「運転手さん、一度や二度は女性から誘われたこと、あるんじゃないの?」 ある夜、銀座から吉祥寺までという男性客からこう尋ねられた。ほろ酔い加減で上機嫌の様子だ。「いえいえ、残念ながらそういう経験…
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(30)忘れられない「赤の思い出」…おめでたい出来事もタクシーの中では話は別
鉄道ファンならご存じのはずだが、JR東海所属の「ドクターイエロー」が来年、引退するという。ファンの間では、引退を惜しむ声があるとテレビのワイドショーが伝えていた。調べてみると「新幹線電気軌道総合試験…
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(29)幸運な出会いと一抹の寂しさ…乗車料金2万円以上の乗客は、高校の同級生だった
「効率よく稼ぐコツなんてあるんでしょうか」 ドライバーになりたての頃のこと。同じ会社のある先輩ドライバーに尋ねてみたことがある。無口だが、いつも柔和な表情を浮かべていて、私の悩みに耳を傾けてく…
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(28)タクシー券悪用で「キックパック」の誘い…バブル期にはいろんなことがありました
「バブルのころは……」 60代、70代の方なら、ほとんどの人がこうした前振りではじめる景気のいいエピソードの1つや2つはあるはずだ。程度の差はあるだろうが、なかには「臨時ボーナスが1人100万…
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(27)大女優と“夢の競演”も…携帯電話で話す乗客にはしばしば驚かされる
5年ほど前のことだ。 「おい、聞いてんのか!」 突然のお客の怒声に驚き「は、はい、なんでしょうか」と返した。すると「運転手さん、ごめんね。電話してるから」と携帯電話を耳元から離してお客…
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(26)「グラッチェ」こそなかったが…ケーシー高峰さんは本物の名医のようだった
「お仕事は何ですか?」 医者、弁護士、大学教授なら、待ってましたとばかりに誇らしげに自分の職業を明かす人がほとんどだろう。こうした職業の人は、尋ねた人から尊敬のまなざしを向けられることはあって…
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(25)その女性客は“オバケ”ではなかったけれど…「津田梅子」新札登場でふと思い出した
タクシードライバーが乗せるお客の7割以上は男性客といっていい。ただ、深夜の銀座、赤坂、六本木といった盛り場では、仕事を終えたホステスさんのお客も多くなる。バチが当たりそうだが、正直なところ、こうした…
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(15)乗客が“ドラハラ”に泣き寝入りしない方法…「エコカード」の威力は凄い!
テレビ、新聞などでたびたび「カスハラ」が報道される。ご存じの通り「カスタマー=顧客」の「ハラスメント=嫌がらせ」のことだ。コンビニや飲食店のお客が店の従業員に理不尽な言いがかりをつけ、トラブルに発展…
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(23)英語教師の職を捨て“憧れのタクシードライバー”になった同僚の話
ある日、仕事を終えて営業所に戻り、売上金のチェックをしていたときのこと。事務所で大きな声が響いた。 「今日は25日だから、給料は振り込まれていますよね」 事務職員にそう尋ねる声の主は4…
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(22)ドライバーとお客は「一期一会」だが…「もう一度会いたい」と願う出会いもあった
「袖すり合うも多生の縁」とか「一期一会」とか、1人の人間と見ず知らずの他人との出会いにまつわることわざはいくつもある。前者は、その2人は実は前世で出会っていて、再度会うのは偶然ではなく、何かの縁があり…
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(20)お客の話を聞いてあげるのも、ドライバーの仕事のうち
ある日のこと。高齢の女性が手を上げているのを見つけてクルマを止めた。いつもの街を流していたのだが、なかなかお客に巡り合えず「どうしたものか。場所を変えるか」と考えていたときだっただけに「ラッキー」と…
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(19)「前のクルマについて行って」と言われたけれど…なんと相手はマイバッハだった
タクシードライバーにとって無線配車の仕事はありがたい。お客待ちのために駅やホテルで“つけ待ち”していてもなかなか自分の順番が来なかったり、街を流していても手を上げてくれるお客に遭遇しなかったりするの…
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(18)苦労から学んだのは、お客に対して素直に「教えてください」と言えるメンタリティー
タクシードライバーになり始めの頃、もっとも神経を使ったのが大都会・東京の走り方だった。埼玉県の田舎町で生まれ育ち、大学生時代も埼玉県、卒業後に手伝い始めた父親の会社も同じ田舎町だった。だから、タクシ…
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(17)「籠脱け」被害で私は一計を案じた…「お宅の玄関までお供いたします!」
タクシーは、江戸時代でいえば駕籠のようなものだ。そのせいか、タクシー業界には、江戸時代の名残である「駕籠屋」にまつわる言葉も残っている。前にこのコラムで紹介したが、街道で不当な商売をする「雲助」はそ…
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(16)他人様のお金を黙って懐に入れたら…「1万円札」をめぐる2つの思い出
古典落語で有名な「時そば」は、そば代を支払うときに何度も「いま、何時だい?」と尋ねて、そば屋の注意をそらしなんとかそば代をごまかそうとする客の話。幸いなことに私はそんな客に遭遇したことはない。 …