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内田正治タクシードライバー

1951年埼玉県生まれ。大学卒業後、家業の日用品、雑貨の卸会社の専務に。しかし、50歳のときに会社は倒産。妻とも離婚。両親を養うためにタクシードライバーに。1日300キロ走行の日々がはじまった。「タクシードライバーぐるぐる日記」(三五館シンシャ)がベストセラーに。

(26)「グラッチェ」こそなかったが…ケーシー高峰さんは本物の名医のようだった

公開日: 更新日:

「お仕事は何ですか?」

 医者、弁護士、大学教授なら、待ってましたとばかりに誇らしげに自分の職業を明かす人がほとんどだろう。こうした職業の人は、尋ねた人から尊敬のまなざしを向けられることはあっても、バカにされるようなことはまずない。

 これがタクシードライバーということになれば、本当に悲しいことだが、まわりの反応は違ってくる。「重労働ですよね」「景気が悪くて大変でしょ」「変な客もいるでしょ」といったふうにねぎらいや同情の言葉をかけてくれるお客はいても、「すごいですね」「うらやましい」といった尊敬、羨望の言葉を発する人は皆無といっていい。それどころか、「前職は?」などと尋ねてくるお客もいる。勝手にドライバーを「訳アリ」と判断しているのだ。

 実際のところ、私の場合、家業の倒産という立派な「訳アリ」だし、ほとんどのタクシードライバーは似たような事情を抱えていて、「第1志望」でこの職についているわけではない。「心ならずも」あるいは「でもしか」なのだ。

 決して収入が多いわけではないし、一般的な社会的評価が高くないせいかもしれない。前にも述べたことだが、タクシードライバーの子どもが父親の勤め先を問われて「自動車会社」と答えたという話もある。家に帰っても、子どもが喜ぶような仕事の話ができるわけではないし、致し方ないかもしれないが、残念な話だ。

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