実録 父親がボケた
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<20>認知症との付き合い方は否定せず、急がせず、焦らせず
月額利用料が低めかつ安定した特養ではあるがオプションもある。月1回のヘアカットや想定外の薬剤費など、全て市価に比べれば安価だが、ちりも積もれば何とやらだ。 ケチくさい話だが、具体例を記してお…
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<19>施設嫌がる父への罪滅ぼしは「快」の感情を増やすこと
介護のプロ、ケアマネジャーの説得で、あっけなく在宅介護を諦めた母。その日の夜、叔母(母の妹)に電話をしている様子を見ていて、私は戦慄を覚えた。 「今はまともなお父さんが3割で、今後もっと減る…
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<18>「お父さんかわいそう」母は自宅介護したいと言うが…
入所して1カ月。多床室のほうも続々と埋まり、施設内は一気に人口が増えた。呼吸する管を通しているため、びっくりするほど大きな濁音を発し続ける人もいれば、徘徊(はいかい)して施設内パトロールをしている人…
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<17>想定外の入居者トラブル 他人の部屋で無断失禁老人も
特養に入所できる条件は、要介護度3以上だ。父は4で、「排泄や入浴などの日常生活全般に全面的な介助が必要」。唯一、食事だけは介助不要。箸を使えるし、出された食事はいつも完食。食事は施設内で作られるので…
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<16>施設の部屋の掃除がずさん…汚していたのは父だった
今年3月末。ようやく父が特養に入所した。 新築なので、どことなく建材のニオイも残っている。でも糞尿のニオイよりはましだ。入所者はまだ揃わず、活気はない。介護士はいるものの、体制はまだ完璧では…
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<15>介護疲労がたまりにたまり常識人の母が暴言を吐いて…
仕方なく実家へ飛んで行き、父の目の前で弔電を打ってなだめる。漆盆付きで8000円なり。父はしばらく興奮状態だったが、さすがに娘がわざわざ東京から来て弔電を打ったことで、冷静になってくれたようだ。 …
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<14>知人の訃報に「葬儀に行かねば!」と大興奮状態に
特養の契約書の中身を少しだけ紹介しておこう。 急変時における延命などに関する意思確認書(蘇生処置をするか否か)、生命維持が困難になってきた場合の医療処置、食事を経口摂取できなくなった場合、管…
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<13>施設に入れるということは、父の命を預けるということ
入所までショートステイを継続するかと思いきや、母がある決断を告げた。 「入所までの間、しばらく家にいさせてあげたい」 突如独居になり、猛烈に寂しくなったこともあるだろう。ショートステイ…
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<12>施設の母体は新興宗教 表情暗く雰囲気はまるで収容所
老人ホームの実態を見慣れていない私は、特養の雰囲気に気おされた。でもそれは特養に限ったことではない、と見学して気づいた。 パンフレットで美辞麗句を並べる有料老人ホームでも、「この世の果て」み…
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<11>月額利用料が安めの特養…あまりに粗末な食事に愕然
新設の特別養護老人ホームに入所できることになった父。しかも多床室(4人部屋)ではなく個室だ。これで月額約18万円。厚生年金と企業年金でまかなえる範囲だ。もし父が私のようなフリーランスで国民年金だけだ…
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<10>「もう絶望感しかないの…」母が電話口で泣き出した
母は弱りきった声で「もう絶望感しかないの」と、電話口で泣き出した。そこで父だけでなく母もインフルエンザに感染したことを知る。夜、タクシーをとばして実家へ。高熱で疲労困憊の母、そして首の回りがドス黒く…
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<9>父は通所介護を心から楽しむものの母は疲労困憊
トイレの場所がわからなくなり、家の中で迷子になるほどボケてきた父だが、面白いことに英単語はよく出てくる。実家で葛飾北斎の画集を見ていた私が、「あれ、菊って英語でなんていうんだっけ?」とつぶやいたら、…
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<8>わずか半年で介護認定「要支援1」から「要介護2」へ
私の夫は年1回、元日だけ私の父に会う。夫いわく、「最初はコワモテだったけど、ここのところ表情がどんどんまるくなってきた」そうだ。父は俳優の石橋蓮司に似ている。顔も頭髪も。テレビで蓮司を見るたびに、親…
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<7>出かけたまま帰り道が分からなくなり工場に“不法侵入”
実は10年前、私はある取材で「成年後見制度」を知った。両親がボケて管理できなくなる前に、私が後見人になるという提案をしたところ、父は怒りで黙り込み、母には「親をバカにして!」とひどく叱られた。決して…
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<6>認知症進行で貯金おろせず泣く母 ドンパン節を歌う父
父と母は年金暮らしだ。父名義の口座から母が生活費を引き出す。一企業を長年勤めあげた父は、厚生年金と企業年金でそれなりの額を受け取っている。 しかし2016年3月に父は銀行のカードをなくし、印…
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<5>「向田邦子のはがき作戦」でボケ対策するも…撃沈
2016年、本格的な介入を決意した姉と私は、まず地域包括支援センターに電話をし、要支援認定の不服申し立てをすることにした。そして父を運動させるために、リハビリ専門のデイサービスに通わせることに。週1…
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<4>ボケてテレビ三昧 筋力低下で浴槽から出られなくなった
ボケたのをいいことに、父のプライベートをさらけ出して銭に換える鬼畜の所業。それが私のなりわいである。父が嫌いなワケではない。むしろ好きだ。尊敬もしてきた。でも介護はしない。「ドクターX」の米倉涼子で…
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<3>排泄の失敗が増え…とうとう紙パンツをはかせることに
転倒する頻度もさることながら排泄の失敗も増えた。小便はもちろんのこと、大便もだ。その処理をするのはすべて母。ある日、大便を漏らした父。母によれば「羞恥心や罪悪感は一切なく、ヘラヘラと笑っていた」。2…
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<2>ぼんやりすることが増えた父から「文化」がなくなった
メールを打てなくなってから1年後の2014年。父の行動がおかしくなってきた。 母いわく「食事を出した途端にパソコンの電源をつけたり、他のことをやり始めるからムカつく」。わざと嫌がらせをしてい…
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<1>始まりは5年前…メールの文面がひらがなだけになり
この春、私の父は喜寿を迎えた。超高齢社会の日本で「77歳はまだ若い」と思うかもしれないが、父はこの数年猛スピードで老けていき、年齢不相応のボケっぷりを発揮した。 現在は自分の足で立つのもおぼ…