著者のコラム一覧
吉田潮ライター、イラストレーター

1972年生まれ、千葉県出身。ライター、イラストレーター、テレビ評論家。「産まないことは『逃げ』ですか?」など著書多数

<14>知人の訃報に「葬儀に行かねば!」と大興奮状態に

公開日: 更新日:

 特養の契約書の中身を少しだけ紹介しておこう。

 急変時における延命などに関する意思確認書(蘇生処置をするか否か)、生命維持が困難になってきた場合の医療処置、食事を経口摂取できなくなった場合、管で栄養を通すIVH(中心静脈栄養)や末梢点滴、経鼻経管栄養、胃ろう造設を希望するかどうか、などなど。また、転倒時のケガなど予測不能な事故に関して、施設は責任を負わない・訴訟もしないという念書もあった。 

 努めて冷静にサインしようと心掛けた。以前、姉とは「胃ろうはやめよう」と話してはいたのだが、いざ父の命の選択肢をその場で迫られると、頭の奥がしびれて熱くなった。母が余計な同情を募らせて入所を取りやめるなどと言わないよう、私は極力ドライな姿勢を装う。本当は、父の死を強制的に妄想させられて、脳内はひどく混乱していたのだが。

 冷徹に淡々と施設入所を選択しても、こういう細かい感情の揺さぶりは多々起こる。世の中、なんでもスッパリ快諾・解決なんて、本当はウソだ。人は弱い。

 一方、父はというと、そもそも特養を理解していない。「入院」という言葉を使うので、リハビリの病院と思っているフシがある。自分は少し弱っているが、まだまだ健常な社会人(60歳想定)という意識もあるようだ。それを物語る事件が起きた。朝刊で知人の訃報をうっかり読んでしまった父が「葬儀に行く!」と暴れ始めたのだ。ヨチヨチと歩き、たんすからワイシャツを引っ張り出し、息切れしながら喪服を出せと怒鳴る。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    八角理事長が明かした3大関のそれぞれの課題とは? 豊昇龍3敗目で今場所の綱とりほぼ絶望的

  2. 2

    フジテレビにジャニーズの呪縛…フジ・メディアHD金光修社長の元妻は旧ジャニーズ取締役というズブズブの関係

  3. 3

    元DeNAバウアーやらかし炎上した不謹慎投稿の中身…たびたびの“舌禍”で日米ともにソッポ?

  4. 4

    松本人志は「女性トラブル」で中居正広の相談に乗るも…電撃引退にショック隠しきれず復帰に悪影響

  5. 5

    ついに不動産バブル終焉か…「住宅ローン」金利上昇で中古マンションの価格下落が始まる

  1. 6

    フジテレビ顧問弁護士・菊間千乃氏に何が?「羽鳥慎一モーニングショー」急きょ出演取りやめの波紋

  2. 7

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  3. 8

    菊間千乃は元女子アナ勝ち組No.1! フジテレビ退社→弁護士→4社で社外取締役の波瀾万丈

  4. 9

    中居正広「引退」で再注目…フジテレビ発アイドルグループ元メンバーが告発した大物芸能人から《性被害》の投稿の真偽

  5. 10

    中居正広「華麗なる女性遍歴」とその裏にあるTV局との蜜月…ネットには「ジャニーさんの亡霊」の声も