「オオカミたちの隠された生活」ジム&ジェイミー・ダッチャー著、岩井木綿子訳
オオカミの群れは、複雑な社会的序列を保つ。夫妻のミルクで育った2頭は、外見はそっくりだが、一頭はリーダー(アルファ)に、そしてもう一頭は最下位(オメガ)の両極に分かれた。アルファは、単に強いだけでなく群れ全体の保護者としての責任を果たし、オメガは群れの手荒な扱いに耐え続けなければならない。一方で、夫妻は群れの中に序列を超えた友情があるのも確認したという。さらに、オメガに人間のような心配りをするアルファの行動に目を見張ったこともある。
アメリカはオオカミの復活に成功したが、一方で誤解などから時計の針を巻き戻してその成果を白紙に戻してしまおうとする動きもある。夫妻は、オオカミは野生の仲間たちの声を代弁する外交使節だと語る。そんなオオカミの生態を通し、動物との共生、共存について考える。
(エクスナレッジ 2800円)