「愛される資格」樋口毅宏著

公開日: 更新日:

 大手文具メーカー「あねちけ」に勤める富岡兼吾は33歳、バツイチ。仕事に情熱が持てず、かといって特別な才能もなく、人生に倦んでいる。おまけに、体育会系のこわもて上司、下永とそりが合わず、鬱憤がたまりにたまっていた。

 ある夜、泥酔した下永を自宅まで送り届けるハメになった兼吾は下永の妻・秀子と出会い、復讐を思いつく。にっくき上司の妻を寝取ってやれ!

「週刊ポスト」の連載をまとめた長編小説。同時代の出来事や実在の著名人の言説を随所にちりばめながら、物語は展開する。

 ちょっとした手練手管を弄して、兼吾の不遜な企みは成功した。巨根とテクニックには自信のある兼吾の手ほどきで、貞淑そのものに見えた13歳年上の人妻はみるみる変貌していく。不倫現場の描写が濃厚。

 復讐のつもりが、ぬきさしならなくなり、兼吾よ、さあどうする、という正念場を迎えて物語は二転三転。

 30歳を過ぎても大人になれなかった兼吾は、秀子との関係が深まる過程で過去と決別し、ようやく地に足をつけて歩み出すのだが、彼の未来は予断を許さない。待ち受けているのは「死の棘」(島尾敏雄の小説)の世界かも……という怖さが残る。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    1年ぶりNHKレギュラー復活「ブラタモリ」が好調も…心配な観光番組化、案内役とのやり取りにも無理が

  2. 2

    大リストラの日産自動車に社外取締役8人が「居座り」の仰天…責任問う大合唱が止まらない

  3. 3

    眞子さん極秘出産で小室圭さんついにパパに…秋篠宮ご夫妻に初孫誕生で注目される「第一子の性別」

  4. 4

    広島新井監督がブチギレた阪神藤川監督の“無思慮”…視線合わせて握手も遺恨は消えず

  5. 5

    故・川田亜子さんトラブル判明した「謎の最期」から16年…TBS安住紳一郎アナが“あの曲”を再び

  1. 6

    三山凌輝活動休止への遅すぎた対応…SKY-HIがJYパークになれない理由

  2. 7

    所属先が突然の活動休止…体操金メダリストの兄と28年ロス五輪目指す弟が苦難を激白

  3. 8

    大阪万博は値下げ連発で赤字まっしぐら…今度は「駐車場料金」を割引、“後手後手対応”の根本原因とは

  4. 9

    芳根京子“1人勝ち”ムード…昭和新婚ラブコメ『めおと日和』大絶賛の裏に芸能界スキャンダル続きへのウンザリ感

  5. 10

    国民民主党・玉木代表は今もって家庭も職場も大炎上中…「離婚の危機」と文春砲