「新・戦争論」池上彰・佐藤優著
ベルリンの壁の崩壊とソ連の解体によって冷戦が終結したとき、これで20世紀を覆った「戦争」も終息に向かうのではないかと期待が寄せられた。しかし現実は、旧ユーゴスラビアの内戦、アメリカ同時多発テロ、……近年ではウクライナの内戦、「イスラム国」の台頭と、新たな戦争の世紀へと突入している感がある。
そうした冷戦終結以降の戦争を、ジャーナリストの池上彰と作家で元外務省主任分析官の佐藤優が、互いにとっておきの知識を駆使して読み解いていく。
導入は安倍政権の提唱する集団的自衛権の問題。佐藤は国際法の観点から同法は有名無実であると断じ、日本と世界のグローバルスタンダードとのズレを指摘する。続いて池上は「イスラム国」や民間軍事会社の出現により、従来の国家同士の戦いとは異なる複雑な構図の戦争の実態を紹介。以後、中国の少数民族問題、ウクライナ問題の歴史的経緯、イスラム教各派の確執、北朝鮮の拉致問題の行方、尖閣諸島問題への対応策と話題は多岐に及ぶ。混迷する世界情勢の羅針盤として格好の一冊。
(文藝春秋 830円+税)