「火星-最新画像で見る『赤い惑星』のすべて」ジャイルズ・スパロウ著 日暮雅通訳
裸眼で見える5つの惑星の中でも、赤く輝く火星は、有史以前から人類にとって特別な存在だった。古代メソポタミアの占星術師たちは、その赤い色から戦と疫病の神ネルガルに、古代ギリシャでは軍神アレスに結びつけられ、火星の名マルスはローマ神話のアレスに当たる。
望遠鏡が発明される以前からその複雑な動きは天文学者らを魅了し、その動きを綿密に研究することが、天文学の革命へとつながった。
そんな人類にとって特別な星、火星の世界を案内してくれる大判ビジュアル・サイエンス・ブック。
直径が地球の半分強、質量11%、表面重力38%という火星の表面には、地球と同じく地殻変動や火山活動などの地質的特徴と気候の変化によって刻まれた複雑な歴史の跡が数多く残り、美しくも不思議な世界をつくりだしている。
あの特徴的な色は、地表の大部分を覆う細かい赤い砂に由来する。そしてその砂が、頻繁に吹き荒れるダスト・ストーム(砂塵嵐)や、竜巻のようなダスト・デビル(塵旋風)によって、地表にさまざまな陰影をつくりだす。